相続手続き

法定相続人の調べ方 — 確認方法・順位・割合をやさしく解説

更新日: 2026/2/27読了: 31分

この記事のまとめ

  • 配偶者は常に相続人、血族は子→父母→兄弟の順
  • 出生から死亡までの戸籍謄本を集めて相続人を確定する
  • 法定相続情報一覧図を作ると各種手続きで使い回せる

はじめに

相続手続きで最初にやるべきこと——それは「誰が法定相続人なのか」を確定させることです。

相続人が一人でも漏れていると、遺産分割協議は無効になります。銀行口座の解約も、不動産の名義変更も進みません。この記事では、法定相続人の定義から確認の具体的手順まで、順を追って解説します。

注意

相続人が一人でも漏れた状態で行った遺産分割協議は無効になります。故人の出生から死亡までの戸籍を必ず遡って確認しましょう。

法定相続人とは

法定相続人とは、民法で定められた「亡くなった方(被相続人)の財産を相続する権利を持つ人」のことです。

相続人になれるのは、被相続人の配偶者血族に限られます。配偶者は常に相続人になり、血族は以下の優先順位に従って相続人が決まります。

法定相続人の順位

民法では、血族相続人に3つの優先順位を設けています。上の順位の人がいれば、下の順位の人は相続人になりません。

順位相続人根拠条文備考
常に相続人配偶者民法890条他の相続人と併せて常に相続人になる
第1順位(直系卑属)民法887条1項実子・養子を問わない。胎児も含む
第2順位父母・祖父母(直系尊属)民法889条1項1号第1順位がいない場合に相続人になる
第3順位兄弟姉妹民法889条1項2号第1・第2順位がいない場合に相続人になる

配偶者について

配偶者とは、法律上の婚姻関係にある夫または妻です。事実婚(内縁関係)のパートナーは法定相続人に含まれません。離婚した元配偶者も同様です。

子について

被相続人の子は第1順位の相続人です。実子だけでなく養子も含まれます。また、婚外子(非嫡出子)であっても、認知されていれば相続人になります。2013年の最高裁決定により、嫡出子と非嫡出子の相続分は同等になっています。

なお、相続開始時に胎児であっても、無事に生まれれば相続人として扱われます(民法886条)。

父母・祖父母について

子(およびその代襲相続人)がいない場合に限り、第2順位として直系尊属が相続人になります。父母のうち一方でも存命であれば祖父母は相続人にはならず、より近い世代が優先されます。

兄弟姉妹について

第1順位(子)も第2順位(直系尊属)もいない場合にのみ、第3順位として兄弟姉妹が相続人になります。兄弟姉妹が相続人になる場合の詳細は「兄弟姉妹が相続人になる場合」をご覧ください。

父母の双方が同じ兄弟姉妹(全血兄弟姉妹)と、父母の一方のみが同じ兄弟姉妹(半血兄弟姉妹・いわゆる異母兄弟や異父兄弟)では、相続分が異なります。半血兄弟姉妹の相続分は全血兄弟姉妹の2分の1です(民法900条4号ただし書き)。

法定相続分の割合

法定相続分とは、民法900条で定められた各相続人の取り分の目安です。あくまで「遺産分割の基準」であり、遺産分割協議で相続人全員が合意すれば、法定相続分と異なる分け方もできます。遺言書がある場合は、遺言の内容が優先されます。

相続人の組み合わせ別の割合

相続人の組み合わせ配偶者の取り分他の相続人の取り分
配偶者 + 子1/2子で 1/2 を均等に分ける
配偶者 + 父母(直系尊属)2/3父母で 1/3 を均等に分ける
配偶者 + 兄弟姉妹3/4兄弟姉妹で 1/4 を均等に分ける
子のみ(配偶者なし)子で全額を均等に分ける
父母のみ父母で全額を均等に分ける
兄弟姉妹のみ兄弟姉妹で全額を均等に分ける

具体的な計算例

例1: 配偶者と子2人の場合

遺産総額が6,000万円だとすると、配偶者が1/2で3,000万円。子2人が残りの1/2(3,000万円)を均等に分けるので、各1,500万円ずつ。

例2: 配偶者と被相続人の母の場合

同じ6,000万円なら、配偶者が2/3で4,000万円。母が1/3で2,000万円。

例3: 配偶者と兄弟2人の場合

配偶者が3/4で4,500万円。兄弟2人が残りの1/4(1,500万円)を均等に分けるので、各750万円ずつ。

遺産分割協議の進め方については「遺産分割協議のやり方 — 協議書の書き方・必要書類・注意点」で詳しく解説しています。

代襲相続とは

代襲相続(だいしゅうそうぞく)とは、本来の相続人が相続開始よりも前に亡くなっている場合などに、その子が代わりに相続人になる制度です(民法887条2項)。代襲相続の詳しい手続きと注意点は「代襲相続ガイド」で解説しています。

代襲相続が発生するケース

原因内容
相続開始前の死亡本来の相続人が被相続人より先に亡くなっていた場合
相続欠格民法891条の欠格事由に該当する場合
相続廃除被相続人の申し立てにより相続権を剥奪された場合

注意すべきは、相続放棄は代襲相続の原因にならないということです。子が相続放棄をしても、孫が代わりに相続人になることはありません。

代襲相続の範囲

この違いは実務上重要です。被相続人に子がおらず、兄弟姉妹が相続人となるケースで、その兄弟姉妹がすでに亡くなっていれば甥・姪が代襲相続しますが、甥・姪も亡くなっている場合、その子は相続人にはなりません。

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相続人になれない場合

法定相続人の範囲に入っていても、以下のケースでは相続人になれません。

相続欠格(民法891条)

一定の重大な非行があった場合、法律上当然に相続権を失います。裁判所への申し立ては不要で、該当する事実があれば自動的に欠格となります。

民法891条に定められた欠格事由は5つあります。

号数欠格事由の内容
1号故意に被相続人や先順位・同順位の相続人を殺害し、または殺害しようとして刑に処せられた
2号被相続人が殺害されたことを知りながら、告発・告訴しなかった
3号詐欺・強迫によって、被相続人が遺言をすること等を妨げた
4号詐欺・強迫によって、被相続人に遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、または変更させた
5号被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した

相続廃除(民法892条)

被相続人に対する虐待や重大な侮辱、著しい非行があった場合に、被相続人が家庭裁判所に申し立てて相続権を剥奪する制度です。遺言で廃除の意思表示をすることもできます(民法893条)。

廃除の対象となるのは遺留分を持つ相続人(配偶者・子・直系尊属)に限られます。兄弟姉妹には遺留分がないため、遺言で相続させないと書けば足りるので廃除の対象外です。

相続放棄

厳密には「相続人になれない場合」ではなく、「相続人が自ら権利を放棄する」手続きです。相続の開始を知った日から3か月以内に、家庭裁判所に申し立てます。

相続放棄を検討している方は「相続放棄の期限は3か月 — 手続き方法・費用・注意点」をご覧ください。

法定相続人を確定させるための戸籍の集め方

ここからが実務の本題です。法定相続人を正式に確定させるには、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取得する必要があります。

なぜ出生まで遡る必要があるのか

被相続人に認知した子や養子がいないか、婚姻歴がないかなどを確認するためです。現在の戸籍だけでは把握できない家族関係が、過去の戸籍に記録されていることがあります。

必要な戸籍の種類と費用

書類の種類内容手数料
戸籍謄本(全部事項証明書)現行の戸籍に記載されている全員分の情報1通450円
除籍謄本全員が除籍された戸籍(婚姻・死亡・転籍等による)1通750円
改製原戸籍謄本法改正前の様式で作成された古い戸籍1通750円

一般的に、1人の被相続人について4〜10通程度の戸籍が必要になります。費用の目安は3,000円〜8,000円程度です。

取得の手順

ステップ1: 被相続人の最後の本籍地で戸籍謄本を取得する

死亡届を出した後の戸籍謄本(死亡が記載されたもの)を最初に取得します。本籍地の市区町村役場の窓口か、郵送で請求できます。

ステップ2: 戸籍を読み、一つ前の戸籍をたどる

取得した戸籍に「転籍」「婚姻」「改製」などの記載があれば、その前の本籍地でさらに古い戸籍を取得します。この作業を出生時の戸籍にたどり着くまで繰り返します。

ステップ3: 相続人全員の現在の戸籍謄本を取得する

確定した法定相続人それぞれについて、現在の戸籍謄本を取得します。存命であることの証明と、身分関係の確認のためです。

ステップ4: 必要に応じて被相続人の住民票の除票を取得する

被相続人の最後の住所を証明するために必要です。法定相続情報一覧図を作成する場合にも使います。取得方法は「住民票の除票の取り方」で詳しく解説しています。

戸籍の広域交付制度を活用する

2024年3月1日から、戸籍法改正により広域交付制度が始まりました。これまでは本籍地の市区町村でしか戸籍を取得できませんでしたが、この制度により全国どこの市区町村窓口でも被相続人の出生から死亡までの連続戸籍をまとめて請求できます。

ただし、以下の制限があります。

広域交付制度を使えば、これまで複数の市区町村に郵送で請求していた手間が大幅に軽減されます。被相続人の配偶者や子が請求する場合は、ぜひ活用してください。

戸籍の読み方のポイント

古い戸籍は縦書きで手書きのため、読み取りが難しいことがあります。戸籍は時代によって形式が異なり、主に以下の種類があります。

戸籍の種類形式時代
現在戸籍横書き(コンピュータ化)平成6年以降に順次移行
改製原戸籍(平成改製)縦書き(タイプ)昭和後期〜平成初期
改製原戸籍(昭和改製)縦書き(手書き)昭和32年以前
大正・明治の戸籍縦書き(毛筆・手書き)明治〜大正

以下のポイントを押さえておくと、効率よく読み解けます。

戸籍の読み取りに自信がない場合は、司法書士や行政書士に依頼するのも有効です。戸籍収集から相続人確定までを代行してもらえます。費用の目安は3万〜8万円程度です。

法定相続情報一覧図の活用

戸籍を集めて相続人を確定させたら、法定相続情報一覧図を作成することをおすすめします。

法定相続情報一覧図とは

法務局が認証する、相続関係を一覧にまとめた書面です。2017年にスタートした制度で、一度作成すれば戸籍謄本の束を何度も提出する手間が省けます。

メリット

申請先

以下のいずれかの法務局に申し出ます。

銀行口座の凍結解除手続きについては「故人の銀行口座が凍結されたら — 解除手続きと必要書類」で詳しく解説しています。不動産の相続登記は「相続登記(不動産の名義変更)ガイド」をご参照ください。

ポイント

法定相続情報一覧図を法務局で作成すれば、戸籍謄本の束を何度も提出する手間が省けます。発行手数料は無料で、銀行・法務局・税務署など複数の手続きで使い回せます。

相続人確定の全体フロー

ここまでの内容を時系列でまとめます。

順番やること目安の期間
1被相続人の死亡記載のある戸籍謄本を取得数日〜1週間
2出生まで遡って連続した戸籍を取得2〜4週間
3戸籍を読み解き、法定相続人を洗い出す数日
4相続人全員の現在の戸籍謄本を取得1〜2週間
5法定相続情報一覧図を作成・申請(任意)1〜2週間
6相続人の確定 → 遺産分割協議へ

相続人が確定したら「相続関係説明図の書き方」を参考に、相続関係説明図を作成しましょう。相続登記や金融機関の手続きで活用できます。

戸籍の取得には郵送でのやり取りが必要になることが多く、広域交付制度を使っても時間がかかります。相続放棄の期限は3か月、相続税の申告期限は10か月です。早めに着手してください。

相続手続きの全体スケジュールは「相続手続きの全体ガイド — 何から始める?流れと期限を解説」で確認できます。

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よくある質問

Q1. 法定相続人を自分で調べることはできますか?

はい、自分で調べることは可能です。被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を市区町村役場で取得し、記載内容を読み解いて相続人を確定させます。2024年3月に始まった広域交付制度を使えば、最寄りの市区町村窓口で一括請求できるため、以前よりも手間は減っています。ただし、古い戸籍の読み取りや複雑な家族関係の整理が難しい場合は、司法書士や行政書士への依頼を検討してください。

Q2. 前妻(前夫)との子は法定相続人になりますか?

なります。離婚によって元配偶者との婚姻関係は解消されますが、親子関係は消滅しません。前妻(前夫)との間に子がいれば、その子は第1順位の法定相続人です。再婚後の子と前婚の子の相続分は同等です。被相続人の出生から死亡までの戸籍を遡ることで、前婚の子の有無を確認できます。

Q3. 相続人の確定に期限はありますか?

相続人の確定そのものに法律上の期限はありません。しかし、相続放棄は相続を知った日から3か月以内(民法915条)、準確定申告は4か月以内、相続税の申告は10か月以内という期限があります。これらの手続きには相続人の確定が前提となるため、できる限り早く——理想的には死亡後1か月以内に——戸籍の取得に着手することをおすすめします。死亡後の手続き全体については「死亡後の手続き一覧」をご覧ください。

専門家に相談すべきケース

以下のケースでは、早めに専門家への相談を検討してください。

まとめ

法定相続人の調査は、すべての相続手続きの出発点です。順位と割合のルールを理解したうえで、戸籍謄本を出生まで遡って取得し、漏れなく相続人を確定させてください。

特に気をつけたいのは以下のポイントです。

相続手続きの全体の流れは「相続手続きの全体ガイド」で、お金関連の手続きは「死亡後のお金の手続き一覧」で解説しています。一つずつ、確実に進めていきましょう。

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