相続税の申告 — 基礎控除の計算と10か月の期限
目次
この記事のまとめ
- —基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数
- —申告期限は死亡を知った翌日から10か月以内
- —配偶者の税額軽減で1億6,000万円まで非課税
相続税がかかるかどうかの判断
相続税は、すべての相続に課されるわけではありません。遺産の総額が「基礎控除額」を超えた場合にだけ申告が必要になります。
実際のところ、相続税の申告が必要になるのは全体の約8〜9%程度。大半の相続では基礎控除の範囲内に収まります。
基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下であれば申告不要です。全体の約9割は対象外です。
基礎控除額の計算
基礎控除額の計算式はシンプルです。
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
たとえば配偶者と子ども2人が相続人なら、基礎控除額は4,800万円。遺産の総額がこれを超えなければ、相続税はかかりません。
申告期限
相続税の申告期限は 相続の開始を知った日の翌日から10か月以内。届出先は故人の住所地を管轄する税務署です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申告期限 | 相続の開始を知った日の翌日から 10か月以内 |
| 届出先 | 故人の住所地の所轄税務署 |
| 納付方法 | 現金一括納付が原則 |
10か月は長いようですが、財産の洗い出し・評価、遺産分割協議、書類の準備を考えると、余裕があるとは言えません。早めに動き始めることが重要です。
申告期限は死亡を知った翌日から10か月以内。納付は原則現金一括です。遅れると延滞税・無申告加算税が発生します。
手続きの流れ
ステップ1: 相続財産の洗い出し・評価
故人が保有していた財産をすべてリストアップし、評価額を算出します。
対象となる主な財産:
- 預貯金・現金
- 不動産(土地・建物)
- 有価証券(株式・投資信託など)
- 生命保険金・死亡退職金(みなし相続財産)
- 自動車・貴金属・美術品
- 貸付金・未収入金
不動産の評価は路線価方式や倍率方式を用いるため、自力での計算が難しいケースも多い。この段階で税理士に相談するのも一つの方法です。
ステップ2: 法定相続人の確定
故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取得し、法定相続人を確定させます。基礎控除額の計算に直接関わるため、正確な把握が欠かせません。
ステップ3: 基礎控除額の計算
ステップ1で算出した遺産総額と、ステップ2で確定した法定相続人の数をもとに基礎控除額を計算。遺産総額が基礎控除額を超えるかどうかを確認します。
ステップ4: 遺産分割協議
誰が何を相続するかを相続人全員で話し合います。協議の進め方や協議書の書き方は「遺産分割協議のやり方」で詳しく解説しています。
ステップ5: 申告書の作成
遺産分割が決まったら、相続税の申告書を作成します。国税庁のウェブサイトから書式をダウンロードできます。計算が複雑になる場合は、税理士への依頼を検討してください。
ステップ6: 税務署に申告・納付
申告書と添付書類を故人の住所地の所轄税務署に提出し、相続税を納付します。申告後に行われる可能性のある税務調査については「相続税の税務調査」で対策を解説しています。
- 相続財産の洗い出しと評価額の算出
- 法定相続人の確定(戸籍謄本の収集)
- 基礎控除額の計算と申告要否の判断
- 遺産分割協議の実施と協議書の作成
- 相続税の申告書を作成する
- 税務署に申告書を提出し、相続税を納付する(10か月以内)
主な控除・特例
基礎控除のほかにも、税額を大きく減らせる控除・特例があります。
| 控除・特例 | 内容 |
|---|---|
| 配偶者の税額軽減 | 1億6,000万円、または法定相続分のいずれか大きい方まで非課税 |
| 小規模宅地等の特例 | 居住用宅地は 330㎡まで80%減額 |
| 生命保険金の非課税枠 | 500万円 × 法定相続人の数 |
| 死亡退職金の非課税枠 | 500万円 × 法定相続人の数 |
配偶者の税額軽減は非常に大きい。配偶者が法定相続分(通常は遺産の1/2)以内で取得する場合、相続税はゼロになります。ただし、この特例を使うには申告書の提出が必要です。基礎控除以下になる場合でも申告が必要な点に注意してください。
相続税の税率
基礎控除を超えた部分(課税遺産総額を法定相続分で按分した各取得分)に対して、以下の税率が適用されます。
| 法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | — |
| 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
延納・物納
相続税は現金一括納付が原則ですが、一括で払えない場合の制度もあります。
- 延納: 最長20年間の分割払い。利子税がかかる。担保の提供が必要
- 物納: 現金の代わりに不動産などで納付する制度。延納でも支払いが困難な場合に限られる
いずれも事前に税務署への申請が必要です。
必要書類
| 書類 | 取得先 |
|---|---|
| 相続税の申告書 | 国税庁ウェブサイト・税務署 |
| 故人の出生〜死亡までの戸籍謄本 | 市区町村役場 |
| 相続人全員の戸籍謄本 | 市区町村役場 |
| 相続人全員の印鑑証明書 | 市区町村役場 |
| 遺産分割協議書(写し) | 自分で作成 |
| 不動産の登記事項証明書 | 法務局 |
| 固定資産税評価証明書 | 市区町村役場 |
| 預貯金の残高証明書 | 各金融機関 |
| 生命保険金の支払通知書 | 保険会社 |
財産の内容によって追加書類が必要になることがあります。
まとめ
相続税の申告で最初にやるべきことは、基礎控除額の計算です。「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」を超えるかどうかで、申告の要否が決まります。10か月の期限は財産調査と遺産分割協議で大半が消える。後回しにせず、早い段階で動き始めてください。
死亡後のお金に関する手続き全般は「死亡後のお金の手続きまとめ」を、手続きの全体像は「家族が亡くなったらやること一覧」をご覧ください。
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