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死亡退職金とは?受取人・非課税枠・手続きの流れをわかりやすく解説

更新日: 2026/2/27読了: 28分

この記事のまとめ

  • 非課税枠は500万円×法定相続人の数
  • 受取人は配偶者が最優先で遺産分割の対象外
  • 企業型DC・中退共の死亡一時金も忘れず請求

死亡退職金とは

会社員や公務員が在職中に亡くなった場合、勤務先から遺族に対して支払われるのが「死亡退職金」です。通常の退職金と同じく、勤続年数や給与額をもとに算出されますが、受け取るのは本人ではなく遺族になる点が大きく異なります。

退職金制度を設けるかどうかは企業の任意ですが、厚生労働省の「就労条件総合調査」によると、退職給付制度がある企業の割合は約7〜8割。中小企業でも中小企業退職金共済(中退共)や確定拠出年金(DC)を利用しているケースがあるため、「うちの会社は退職金がないから関係ない」と決めつけず、加入している制度がないか確認することが大切です。

死亡退職金は法律上「みなし相続財産」として扱われ、相続税の課税対象となります。ただし 500万円 × 法定相続人の数 という非課税枠があるため、全額に課税されるわけではありません。

まずは勤務先の退職金規程を確認し、「死亡退職金がいくら支給されるのか」「誰が受け取るのか」を把握することが第一歩です。

受給者の範囲と順位

死亡退職金の受取人は、多くの企業で 労働基準法施行規則第42条〜第45条 の遺族補償に関する規定を準用して定められています。受給者の順位は以下のとおりです。

第1順位: 配偶者

配偶者には、婚姻届を出していなくても事実上婚姻と同様の関係にある方(いわゆる内縁の配偶者)が含まれます。

第2順位: 生計維持関係にあった子・父母・孫・祖父母

故人の死亡当時、その収入によって生計を維持していた、または故人と生計を一にしていた子、父母、孫、祖父母が対象です。順位は子 → 父母 → 孫 → 祖父母の順で、父母については養父母が先、実父母が後になります。

第3順位: 上記に該当しない子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹

生計維持関係になかった子、父母、孫、祖父母と、兄弟姉妹が対象です。兄弟姉妹の中では、故人と生計維持関係にあった方が優先されます。

なお、同順位の受給権者が複数いる場合は、死亡退職金を 均等に分割 して受け取ることになります(労働基準法施行規則第44条)。

会社の退職金規程で独自に受取人を定めている場合はそちらが優先されるため、必ず勤務先に確認してください。

注意

受給者の順位は法令や退職金規程で厳格に定められています。順位を誤ると手続きがやり直しになるため、必ず勤務先に確認してください。

公務員の場合

国家公務員の死亡退職手当は「国家公務員退職手当法」に基づいて支給され、受取人の順位も同法で定められています。地方公務員の場合は各自治体の条例によります。いずれも民間企業と同様に配偶者が最優先で、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹と続く点は共通しています。

死亡退職金と遺産分割の関係

死亡退職金は、受取人が就業規則や法令によって定められている場合、受取人固有の財産 として扱われます。つまり、遺産分割の対象にはなりません。

ポイント

死亡退職金は受取人固有の財産として扱われ、遺産分割の対象外です。生命保険金と同じ考え方です。

この点は生命保険金と同じ考え方です。相続人全員で遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」の対象外ですが、相続税の計算では「みなし相続財産」として課税対象に含まれる点に注意してください。

ただし、退職金規程で受取人が「遺族」ではなく「相続人」と定められている場合や、受取人の定めがない場合は、遺産分割の対象になると判断される可能性があります。規程の文言によって法的な扱いが変わるため、不明な場合は弁護士や税理士に相談しましょう。

手続きの流れ

ステップ1: 勤務先への連絡

故人が亡くなったら、できるだけ早く勤務先(人事部・総務部)に連絡します。死亡退職に伴う各種手続きの案内を受け、必要書類を確認してください。

勤務先への連絡時に確認すべきこと:

ステップ2: 必要書類の準備

勤務先の案内に沿って書類を揃えます。一般的に求められる書類は以下のとおりです。

書類取得先
退職金請求書(死亡退職届)勤務先から交付
故人の死亡の事実がわかる書類(除籍謄本・死亡診断書の写し等)市区町村役場・病院
受取人と故人の関係がわかる戸籍謄本市区町村役場
受取人の本人確認書類運転免許証・マイナンバーカード等
受取人の振込先口座情報金融機関

戸籍謄本は、受取人が配偶者の場合は故人の死亡と婚姻関係が確認できるもの、配偶者以外の場合は故人の出生から死亡までの連続した戸籍が必要になることがあります。戸籍謄本の取り方については「住民票・除票の取り方ガイド」も参考にしてください。

ステップ3: 書類の提出・退職金の受け取り

書類が揃ったら勤務先に提出します。審査の後、指定した口座に死亡退職金が振り込まれます。会社によって異なりますが、書類に不備がなければ 2週間〜1か月程度 で支給されるのが一般的です。

なお、死亡退職金の請求そのものに法律上の期限はありませんが、会社の退職金規程で「死亡後○年以内」と定めている場合があります。また、相続税の課税上は死亡後3年以内に支給が確定したかどうかが分岐点になるため、早めに手続きを進めてください。

弔慰金との違い

勤務先から支給されるお金には、死亡退職金のほかに 弔慰金(ちょういきん)がある場合があります。弔慰金は故人への弔意を表すもので、死亡退職金とは性質が異なり、一定額までは非課税 で受け取れます。

弔慰金の非課税限度額

弔慰金の非課税限度額は、故人の死因によって変わります(国税庁タックスアンサーNo.4120)。

死因非課税限度額
業務上の死亡(労災など)普通給与の 3年分 に相当する額
業務外の死亡(病気・事故など)普通給与の 半年分 に相当する額

「普通給与」とは毎月支給される月給(各種手当を含む)のことで、賞与は含みません。たとえば普通給与が月額30万円で業務上の死亡であれば、30万円 × 36か月 = 1,080万円 までが非課税です。

非課税限度額を超えた部分は、死亡退職金として相続税の課税対象になります。弔慰金が支給される場合は、明細をよく確認してください。

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死亡退職金にかかる税金

みなし相続財産としての取り扱い

死亡退職金は、被相続人(故人)の死亡後 3年以内 に支給が確定したものが相続税の課税対象です(相続税法第3条)。3年を超えてから支給が確定した場合は、受取人の一時所得として所得税がかかります。

非課税枠の計算

死亡退職金の非課税限度額は、生命保険金と同様に以下の式で計算します。

非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数

法定相続人の数非課税限度額
1人500万円
2人1,000万円
3人1,500万円
4人2,000万円

この非課税枠を適用できるのは 相続人 に限られます。相続人以外の方が受け取った死亡退職金には非課税枠の適用はありません。

また、法定相続人の数は、相続放棄をした人がいてもその放棄がなかったものとして数えます。養子がいる場合は、実子がいれば1人まで、実子がいなければ2人までを法定相続人に含めます。

課税対象額の計算例

具体的な計算例を見てみましょう。

前提条件:

計算:

  1. 非課税限度額 = 500万円 × 3人 = 1,500万円
  2. 課税対象額 = 2,500万円 − 1,500万円 = 1,000万円

この1,000万円が、預貯金や不動産などの他の相続財産と合算されて相続税の計算に組み込まれます。相続財産の総額が基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)以下であれば、相続税はかかりません。

受取人が複数いる場合の非課税枠の配分

死亡退職金を複数の相続人で受け取る場合、非課税限度額は各相続人の受取額の割合に応じて按分されます。

各相続人の非課税額 = 非課税限度額 ×(その相続人が受け取った退職金 ÷ 退職金の総額)

たとえば非課税限度額が1,500万円、配偶者が1,500万円、子Aが500万円、子Bが500万円を受け取った場合:

確定拠出年金(DC)の死亡一時金

故人が企業型確定拠出年金(企業型DC)や個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入していた場合、積み立てた資産は 死亡一時金 として遺族が受け取れます。

受取人の順位

死亡一時金の受取人は、加入者があらかじめ指定していた場合はその方が優先されます。指定がない場合の受給権者の順位は以下のとおりです。

  1. 配偶者(事実婚含む)
  2. 故人の収入で生計を維持していた子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹
  3. 上記以外の子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹
  4. 故人の収入で生計を維持していたその他の親族

手続きの流れ

  1. 確定拠出年金の運営管理機関に加入者の死亡を連絡する
  2. 死亡一時金の裁定請求書と必要書類を提出する

請求期限に注意

死亡一時金の請求は、故人の死亡から 5年以内 に行う必要があります。5年を過ぎると、死亡一時金は相続財産として扱われ、相続人全員の同意が必要になるなど手続きが煩雑になります。故人がDCに加入していたかどうかは、勤務先の人事部門や給与明細の天引き項目を確認すれば分かります。iDeCoの場合は、口座のある金融機関からの郵便物や、通帳の引き落とし記録が手がかりになります。

税金の取り扱い

死亡日から 3年以内 に受け取った場合は、みなし相続財産として相続税の対象になります。非課税枠は会社からの死亡退職金と合算して 500万円 × 法定相続人の数 です。3年を過ぎて受け取った場合は、受取人の一時所得として所得税の対象になります。

中小企業退職金共済(中退共)の死亡退職金

故人が中小企業退職金共済(中退共)に加入していた場合、勤務先の退職金とは別に中退共からも死亡退職金が支給されます。

受取人

中退共の死亡退職金は、中小企業退職金共済法に定める遺族に支給されます。順位は配偶者が最優先で、以下、故人の収入で生計を維持していた子・父母・孫・祖父母の順になります。

手続きの流れ

  1. 勤務先が中退共に「被共済者退職届」を提出する(退職年月日は死亡日)
  2. 受取人が「退職金共済手帳」の請求書に記入し、必要書類を添えて提出する
  3. 中退共から受取人の口座に退職金が振り込まれる

必要書類

請求人必要書類
配偶者故人の死亡日と配偶者であることが確認できる戸籍謄本
配偶者以外故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本 + 生計維持を証明する書類

中退共の退職金も、死亡後3年以内に支給が確定すればみなし相続財産として相続税の対象になります。非課税枠は勤務先からの死亡退職金やDCの死亡一時金と合算して 500万円 × 法定相続人の数 です。

中退共への加入は勤務先が行うため、遺族側では加入の有無が分からないことがあります。勤務先に確認するのが確実です。「退職金共済手帳」が自宅にないか探してみるのも一つの方法です。

未払い給与・賞与の取り扱い

死亡退職金とは別に、故人の死亡日までの未払い給与や未消化の有給休暇の買い上げ分、死亡時点で支給日を迎えていない賞与などが支払われることがあります。

これらは死亡退職金とは異なり、故人の「本来の相続財産」として扱われます。つまり、遺産分割の対象になり、相続税の課税対象にもなりますが、死亡退職金の非課税枠(500万円 × 法定相続人の数)は適用されません。

また、故人が亡くなった年の1月1日から死亡日までの給与所得については、相続人が準確定申告を行う必要があります。準確定申告の期限は死亡を知った日の翌日から4か月以内です。

死亡退職金を受け取るまでのチェックリスト

手続きが多岐にわたるため、やるべきことを整理しておきましょう。

やること確認先
勤務先に死亡を連絡し、退職金規程を確認する勤務先の人事部・総務部
死亡退職金の受取人・金額・支給時期を把握する勤務先
弔慰金の支給があるか確認する勤務先
企業型DC・iDeCoの加入状況を確認する運営管理機関
中退共の加入状況を確認する勤務先
必要書類(戸籍謄本等)を取得する市区町村役場
請求書を記入・提出する勤務先・運営管理機関・中退共
相続税の申告が必要か確認する税務署・税理士
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よくある質問

Q. 死亡退職金は相続放棄をしても受け取れますか?

受け取れる場合があります。死亡退職金の受取人が就業規則や法令によって定められている場合、それは受取人固有の財産であり、相続財産には含まれません。そのため、相続放棄をしていても受け取ることが可能です。ただし、相続税の計算上はみなし相続財産として課税対象になる点には注意が必要です。また、相続放棄した方は非課税枠の適用を受けられません。

Q. 死亡退職金と生命保険金の非課税枠は別々に使えますか?

はい、別々に計算されます。死亡退職金の非課税枠(500万円 × 法定相続人の数)と生命保険金の非課税枠(同じく500万円 × 法定相続人の数)は、それぞれ独立して適用されます。たとえば法定相続人が3人の場合、死亡退職金で1,500万円、生命保険金で1,500万円、合わせて最大3,000万円まで非課税で受け取れます。

Q. 勤務先が退職金制度のない会社だった場合、遺族は何も受け取れませんか?

退職金制度は法律で義務付けられたものではないため、制度がなければ勤務先からの死亡退職金はありません。しかし、中退共など外部の退職金共済に加入している場合はそこから支給されます。また、企業型DCやiDeCoに加入していれば死亡一時金を受け取れます。さらに、死亡退職金とは別に、遺族年金未支給年金など公的制度から受け取れるお金もあります。勤務先に加入している制度を確認することが大切です。

まとめ

死亡退職金は、勤務先からの退職金だけでなく、確定拠出年金の死亡一時金や中退共の退職金など複数の制度から受け取れる場合があります。請求しなければ支給されないものがほとんどなので、まずは勤務先に連絡して加入している制度を確認してください。

税金面では 500万円 × 法定相続人の数 の非課税枠が使えますが、他の相続財産と合わせて基礎控除を超える場合は相続税の申告が必要です。弔慰金の非課税枠も別途あるため、支給明細をよく確認しましょう。

死亡後のお金に関する手続き全般は「死亡後のお金の手続きまとめ」を、手続きの全体像は「家族が亡くなったらやること一覧」をご覧ください。

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