故人のマイナンバーカードの返却 — 届出先・手続き・注意点
目次
この記事のまとめ
- —死亡届の受理でカードは自動失効する
- —返却義務はないが個人情報保護のため推奨
- —相続手続き完了まで番号を控えて保管する
はじめに
ご家族が亡くなった後、遺品の中から故人のマイナンバーカードが出てきて「返却が必要なのだろうか」「どこに届ければよいのだろう」と迷われる方は少なくありません。
結論から言えば、故人のマイナンバーカードは死亡届の受理によって自動的に失効しますが、カードそのものは市区町村役場に返却するか、ご自身で裁断・廃棄することが推奨されています。法律上、遺族に対して明確な返納義務が課されているわけではなく、罰則もありません。ただし、ICチップに個人情報が記録されているため、悪用リスクを防ぐためにも適切な処分が望ましいです。
この記事では、マイナンバーカードの返却先・必要書類・手続きの流れから、マイナンバー(番号自体)の取り扱い、マイナ保険証やマイナポイントの扱い、通知カードのみの場合の対応まで、故人のマイナンバーに関する手続きを網羅的に解説します。
なお、マイナンバーカードの返却は死後の手続き全体の中では緊急度が高いものではありません。死亡届の提出や年金の受給停止届など、期限のある手続きを優先しつつ、落ち着いてから取り組んでいただければ十分です。
マイナンバーカードの法的な位置づけ — 死亡届で自動失効する
まず押さえておきたいのが、死亡届を市区町村役場に提出すると、故人のマイナンバーカードは自動的に失効するという点です。
住民基本台帳から故人の情報が抹消されると、それに連動してマイナンバーカードの電子証明書も無効化されます。つまり、死亡届さえ提出すれば、マイナンバーカードを公的な身分証明書として使うことはできなくなり、コンビニでの証明書交付やマイナポータルへのログインなども一切不可能になります。
このように、カードの機能は死亡届の受理によって自動的に停止するため、遺族が別途「失効届」のようなものを出す必要はありません。
返納義務はあるのか
番号法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)には、カード所持者が死亡した場合の返納に関する規定があります。しかし、実務上は遺族に対して返納義務や罰則を設けている自治体はなく、返却しなかったことで罰金や過料が科されることはありません。
多くの自治体では「返却していただくことが望ましいですが、義務ではありません」というスタンスを取っています。実際、横須賀市や京都市など多くの自治体が「返却は任意」と公式に案内しています。
死亡届が受理されるとマイナンバーカードは自動的に失効します。遺族に返却義務はありませんが、相続手続きが完了するまではマイナンバー(12桁の番号)を控えて保管しておきましょう。
それでも返却が推奨される理由は、カードのICチップに氏名・住所・生年月日・個人番号・顔写真といった個人情報が記録されているためです。失効しているとはいえ、物理的なカードが第三者の手に渡れば、個人情報の悪用リスクが残ります。
届出先
故人のマイナンバーカードを返却する場合は、市区町村役場の窓口に持参します。
| 届出先 | 対応窓口 | 受付時間の目安 |
|---|---|---|
| 故人の住所地の市区町村役場 | 市民課・住民課・マイナンバー担当課など | 平日 8:30〜17:15(自治体により異なる) |
窓口の名称は自治体によって異なりますが、「マイナンバーカードを返却したい」と受付で伝えれば、担当部署に案内してもらえます。
なお、一部の自治体では死亡届の提出時にマイナンバーカードの返却を同時に受け付けている場合もあります。死亡届を提出する際に窓口で「マイナンバーカードも返却したい」と伝えてみるとよいでしょう。
自治体によっては返納手続きがない場合も
注意点として、返納手続き自体を設けていない自治体もあります。この場合は、カードのICチップ部分にハサミで切り込みを入れた上で、一般ごみ(不燃ごみ等、自治体のルールに従う)として廃棄してください。ICチップを物理的に破壊することで、個人情報の読み取りを防止できます。
事前に電話で「故人のマイナンバーカードの返却は受け付けていますか」と確認しておくのが確実です。
手続きに必要なもの
返却手続きに必要な書類は以下の通りです。
| 必要なもの | 備考 |
|---|---|
| 故人のマイナンバーカード | 原本。紛失した場合は窓口で申し出る |
| 届出人の本人確認書類 | 運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど |
多くの自治体では上記2点で手続きが完了します。窓口に備え付けの「個人番号カード返納届」(名称は自治体により異なります)を記入し、カードと一緒に提出する流れです。
自治体によっては、以下の書類を追加で求められることがあります。
- 死亡の事実がわかる書類(死亡診断書のコピー、除籍謄本など)
- 届出人と故人の関係がわかる書類(戸籍謄本など)
二度手間を避けるため、事前に電話で確認しておくことをおすすめします。なお、手数料は一切かかりません。
- マイナンバー(裏面の12桁)をメモまたは写真で記録した
- 相続手続き(遺族年金・相続税申告など)がすべて完了した
- 届出先の市区町村役場に必要書類を事前確認した
- 故人のマイナンバーカードと届出人の本人確認書類を準備した
手続きの流れ
ステップ1: 事前に電話で確認する
まず、故人の住所地の市区町村役場に電話し、マイナンバー担当課に繋いでもらいます。以下を確認しましょう。
- 返却手続きを受け付けているかどうか
- 必要書類
- 受付時間と窓口の場所
「故人のマイナンバーカードを返却したい」と伝えれば、担当部署に案内してもらえます。
ステップ2: 窓口で返納届を記入する
窓口に「個人番号カード返納届」が用意されています。記入する主な項目は以下の通りです。
- 故人の氏名・生年月日・個人番号
- 届出人の氏名・住所・連絡先
- 届出人と故人の関係(配偶者、子、父母など)
- 返納の理由(死亡)
ステップ3: カードと書類を提出する
記入した返納届と必要書類を窓口に提出します。担当者が内容を確認し、問題がなければその場で受理されます。手続き自体は10分程度で完了します。回収されたカードは自治体で廃棄処分されます。
届出できる人
届出人は、原則として故人の親族(配偶者・子・父母・兄弟姉妹など)です。同居している必要はありません。
相続手続きの代理人や、成年後見人、遺言執行者なども届出可能な場合がありますが、対応は自治体によって異なります。該当する場合は事前に窓口に確認してください。
マイナンバーカードをすぐに返却しないほうがよいケース
マイナンバーカードは失効していますが、カードに記載されている個人番号(マイナンバー)は相続手続きで必要になる場合があります。以下の手続きでは、故人のマイナンバーの提示や記載を求められることがあります。
- 遺族年金の請求(遺族年金の請求手続き)
- 未支給年金の請求
- 準確定申告(故人の所得税の申告)
- 相続税の申告(相続税の申告手続き)
- 生命保険の保険金請求(生命保険の請求手続き)
これらの手続きが完了するまでは、マイナンバーカード(または個人番号が確認できる書類)を手元に保管しておくことをおすすめします。マイナンバーは住民票の除票にも記載されているため、カードを返却してしまった場合でも番号を確認する手段はありますが、カードがあるほうが手続きはスムーズです。
相続手続きがすべて完了してから返却・廃棄するのが最も安心です。 目安として、相続税の申告(死亡を知った日から10か月以内)が完了した時点で不要になるケースが多いでしょう。
返却しない場合のリスク
返却しなくても法的な罰則はありません。しかし、以下のリスクがあることは知っておきましょう。
個人情報の悪用リスク
マイナンバーカードのICチップには、氏名・住所・生年月日・性別・個人番号・顔写真が記録されています。カード自体は死亡届の受理によって失効していますが、カードの表面に印字された情報は物理的に読み取れる状態のままです。万が一、カードが第三者の手に渡った場合、個人番号を使ったなりすましや、身分証明書としての悪用が行われるおそれがあります。
特に遺品整理中に紛失したり、空き巣被害に遭ったりするケースでは、個人情報の流出リスクが高まります。
ICチップには氏名・住所・生年月日・個人番号・顔写真が記録されています。返却しない場合は、ICチップ部分をハサミで切断してから廃棄してください。
マイナンバーの不正利用
マイナンバー(12桁の番号)そのものは、死亡後も番号として残り続けます。この番号が第三者に知られると、社会保障や税の手続きにおいてなりすましの材料にされる可能性がゼロではありません。マイナンバーカードには表面に個人番号が記載されていないものの(番号は裏面に記載)、ICチップからの読み取りは技術的に可能です。
不要な郵便物が届く可能性
カードの有効期限が近づくと、更新案内等の通知が届くことがあります。死亡届の情報が正しく連携されていれば通常は届かなくなりますが、タイミングによっては届く場合もあります。
マイナンバー(番号自体)の取り扱い
ここからは、マイナンバーカードという物理カードではなく、マイナンバー(12桁の個人番号)そのものの取り扱いについて解説します。
死亡後も番号は残る
マイナンバーは一人に一つ割り当てられた番号であり、死亡後も抹消されることはありません。ただし、住民票が除かれた時点でその番号が新たな行政手続きに使用されることはなくなります。また、他の人に同じ番号が割り当てられることもありません。
相続手続きで番号が必要になる場面
前述の通り、遺族年金の請求、準確定申告、相続税の申告などで故人のマイナンバーが必要になることがあります。番号を確認する方法は以下の通りです。
| 確認方法 | 備考 |
|---|---|
| マイナンバーカードの裏面 | 最も手軽。返却・廃棄前にメモしておく |
| 通知カード | 2020年5月以降は新規発行されていないが、手元にあれば番号確認に使える |
| 住民票の除票(マイナンバー記載あり) | 故人の住所地の市区町村役場で取得可能。1通300円程度 |
| マイナンバー入りの税関係書類 | 故人が確定申告していた場合、控えに記載がある場合がある |
マイナンバーカードを返却・廃棄する前に、必ず裏面の個人番号をメモまたは写真で記録しておきましょう。
個人番号の管理に関する注意
マイナンバーは法律上「特定個人情報」に該当し、その取り扱いには注意が必要です。メモした番号は鍵付きの引き出しなど安全な場所に保管し、相続手続きが完了した後は適切に破棄してください。番号を不用意にSNSやメールで共有することは絶対に避けましょう。
マイナ保険証との関係
2024年12月2日以降、従来の健康保険証は新規発行が廃止され、マイナンバーカードを健康保険証として利用する「マイナ保険証」への移行が進んでいます。故人がマイナ保険証を利用していた場合の扱いについて解説します。
死亡届の受理で自動的に利用停止
マイナポータルの公式FAQによると、亡くなった方の死亡届が自治体で受理されると、マイナンバーカードが自動的に失効となるため、マイナ保険証としての利用もできなくなります。従来の紙の保険証のように、保険証だけを別途返却する手続きは不要です。
資格喪失届は別途必要
ただし、マイナ保険証が自動的に利用停止になるのはあくまでカード側の話です。健康保険の資格喪失届は別途提出する必要があります。届出先は加入していた保険の種類によって異なります。
| 保険の種類 | 届出先 | 期限 |
|---|---|---|
| 国民健康保険 | 市区町村役場 | 14日以内 |
| 協会けんぽ・健康保険組合 | 勤務先の事業所経由 | 5日以内 |
| 後期高齢者医療制度 | 市区町村役場 | 14日以内 |
資格喪失届の詳しい手続きは「健康保険の資格喪失届の出し方」をご覧ください。
経過措置期間中の紙の保険証
2024年12月1日以前に発行された紙の保険証は、最長で2025年12月1日まで使用可能です(経過措置)。故人がこの期間中の紙の保険証を持っていた場合は、資格喪失届と併せて返却してください。
マイナポイントの扱い
故人がマイナポイント事業でキャッシュレス決済サービスにポイントを受け取っていた場合、その扱いはどうなるのでしょうか。
ポイントの相続は決済サービスごとに異なる
マイナポイント事業の公式FAQによると、マイナポイントを受け取る権利はカード所持者本人にのみ帰属します。すでにキャッシュレス決済サービスに付与されたポイントの相続可否は、各決済サービスの利用規約に従います。
- PayPay: PayPayマネー・PayPayマネーライトの残高は相続可能。PayPayポイントは相続不可
- Suica・PASMO等の交通系ICカード: 残高の払い戻しが可能なケースが多い
- クレジットカード系: カード解約に伴い失効するケースが多い
いずれの場合も、各決済サービスの問い合わせ窓口に直接確認するのが確実です。
未申請のマイナポイント
マイナポイントの申込みをしたものの、チャージや買い物をする前にカード所持者が死亡した場合、ポイントは付与されません。
公金受取口座の扱い
マイナンバーカードを使って「公金受取口座」(給付金等を受け取るための口座)をマイナポータルで登録していた場合の扱いです。
死亡届受理で登録情報は無効化される
死亡届が受理されマイナンバーカードが失効すると、マイナポータルへのログインができなくなるため、公金受取口座の登録変更・抹消操作は本人が行うことができなくなります。
公金受取口座として登録されていた銀行口座そのものは、通常の相続手続きに従って処理されます。口座凍結・相続手続きの詳細は「銀行口座の凍結と相続手続き」をご参照ください。
公金受取口座の登録抹消について不明な点がある場合は、デジタル庁のマイナンバー総合フリーダイヤル(0120-95-0178)に問い合わせることをおすすめします。
通知カードのみの場合の対応
マイナンバーカードを作成しておらず、通知カード(緑色の紙製カード)のみを持っていた場合の対応について解説します。
通知カードは2020年5月25日に廃止済み
通知カードは2020年(令和2年)5月25日の法改正により新規発行・再発行が廃止されました。ただし、すでに交付されている通知カードは、記載内容(氏名・住所等)に変更がない限り、マイナンバーを証明する書類として引き続き使用できます。
返却の義務はない
通知カードについても、マイナンバーカードと同様に遺族に対する返納義務はありません。自治体の窓口に返却することもできますし、自宅で裁断して廃棄することもできます。
相続手続きでの利用
通知カードに記載されているマイナンバーは、相続手続き(遺族年金請求・準確定申告・相続税申告など)で必要になる場合があります。手続きが完了するまでは手元に保管しておきましょう。
通知カードを紛失した場合
通知カードを紛失しても、再発行はできません(2020年5月に廃止済み)。故人のマイナンバーを確認する必要がある場合は、**住民票の除票(マイナンバー記載あり)**を故人の住所地の市区町村役場で取得してください。
マイナンバーカードを紛失した場合
故人のマイナンバーカードが見つからない場合でも、慌てる必要はありません。前述の通り、カードは死亡届の受理時点で自動的に失効しています。
紛失した場合は以下のように対応してください。
- 市区町村役場に連絡する — 「故人のマイナンバーカードが見当たらない」と伝えれば、記録上の処理をしてもらえます
- マイナンバーが必要な場合 — 住民票の除票(マイナンバー記載あり)を取得すれば番号を確認できます
- 不正利用の心配がある場合 — マイナンバー総合フリーダイヤル(0120-95-0178)に連絡し、状況を相談してください
よくある質問
Q. マイナンバーカードの返却に期限はありますか?
法律上、明確な期限は設けられていません。死亡届が受理された時点でカードは自動的に失効するため、返却が遅れても罰則はありません。ただし、個人情報保護の観点からは早めの返却・廃棄が望ましいです。相続手続き(遺族年金・相続税申告など)でマイナンバーが必要になる場合は、すべての手続きが完了してから返却するのが合理的です。「死後の手続き一覧」を参考に、期限のある手続きから順に進めましょう。
Q. 故人のマイナンバーカードを身分証として使って銀行手続きなどをしてもよいですか?
いいえ、使えません。死亡届が受理された時点でマイナンバーカードは失効しており、公的な身分証明書としての効力はなくなっています。銀行での口座凍結・相続手続きや各種届出では、届出人(遺族)ご自身の本人確認書類が必要です。故人のカードは「マイナンバーの確認」のためにのみ使用できます。
Q. マイナンバーカードを自分で廃棄してもよいですか?
はい、自治体で返納手続きを行っていない場合や、窓口に行く時間がない場合は、ご自身で廃棄しても問題ありません。廃棄の際は、ICチップ部分(カード右上あたりの金属端子)をハサミで切断し、カード自体も複数に裁断してから処分してください。ICチップを物理的に破壊することで、個人情報の読み取りを防止できます。ただし、相続手続きでマイナンバーが必要になる場合があるため、廃棄前に裏面の個人番号を必ずメモしておきましょう。
まとめ
故人のマイナンバーカードは、死亡届の受理によって自動的に失効します。返却義務や罰則はありませんが、個人情報保護の観点から、市区町村役場への返却または自宅での裁断・廃棄が推奨されています。
ポイントを整理します。
- 届出先: 故人の住所地の市区町村役場(市民課・マイナンバー担当課など)
- 必要なもの: 故人のマイナンバーカード、届出人の本人確認書類
- 届出人: 親族であれば可
- 手数料: 無料
- 所要時間: 10分程度
- 法的期限: なし(ただし、早めの対応が推奨)
- 重要: 返却・廃棄前にマイナンバー(裏面の12桁の番号)をメモしておく
- マイナ保険証: 死亡届の受理で自動的に利用停止(ただし資格喪失届は別途必要)
- 通知カードのみの場合: 返却義務なし。裁断・廃棄で可
死後の手続きは数多くあり、すべてを一度に片付けるのは困難です。まずは期限のある手続き(死亡届は7日以内、年金の届出は10〜14日以内、健康保険の届出は14日以内など)を優先し、マイナンバーカードの返却のように期限のないものは、相続手続きが一段落してから進めましょう。何から手をつければよいか迷ったときは、「家族が亡くなったらやること一覧」を参考に、期限順に整理して計画を立ててみてください。
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