生活・名義変更

故人の運転免許証の返却 — 届出先・必要書類・手続きの流れ

更新日: 2026/2/27読了: 28分

この記事のまとめ

  • 最寄りの警察署で手数料無料・所要10〜15分
  • 法的義務はないが身分証の悪用防止に返却推奨
  • 穴あけ加工で無効化すれば形見として保管可能

はじめに

ご家族が亡くなった後、遺品を整理していると財布や引き出しの中から運転免許証が出てくることがあります。「これはどうすればいいのだろう」「返さなければいけないのだろうか」と迷われる方は少なくありません。

結論から言えば、故人の運転免許証は警察署に返却することが推奨されています。法律上、遺族に対する明確な返納義務や罰則はありませんが、運転免許証は顔写真付きの身分証明書として広く使われているため、悪用リスクを防ぐ意味でも早めの手続きが望ましいです。

この記事では、返却先・必要書類・手続きの流れから、形見として手元に残す方法まで、わかりやすく解説します。故人のパスポートについても返納が必要です。詳しくは「パスポートの返納届」をご覧ください。

なお、免許証の返却は死後の手続き全体の中では緊急度が高いものではありません。大切な方を亡くされた直後の慌ただしい時期に無理をする必要はなく、葬儀や死亡届といった優先度の高い手続きが落ち着いてから取り組んでいただければ十分です。

法律上の位置づけ — 返納義務はあるのか

まず気になるのが「返却しないと法律違反になるのか」という点です。

道路交通法第107条では、免許が取り消されたときや失効したときに「速やかに免許証を住所地の公安委員会に返納しなければならない」と定めています。故人の場合は、死亡によって免許が当然に失効すると法的に解釈されています。しかし、この返納義務は免許を受けた「本人」に課されたものであり、本人が亡くなっている以上、義務を果たすことは物理的に不可能です。

つまり、遺族に対して法的な返納義務が直接課されているわけではなく、返納しなかったからといって遺族が罰則を受けることもありません。

注意

運転免許証は顔写真付きの身分証として悪用されるリスクがあります。法的義務はなくとも、早めの返却が推奨されています。

それでも、実務上は以下の理由から返却が強く推奨されています。

届出先

故人の運転免許証は、以下のいずれかの窓口で返却できます。

届出先対応窓口受付時間の目安
警察署交通課の窓口平日 8:30〜17:15(土日祝休み)
運転免許センター返納窓口平日 8:30〜17:00(施設により異なる)

**最寄りの警察署が最も手軽です。**警察署であれば全国どこにでもあり、特別な予約も不要なことがほとんどです。故人の住所地を管轄する警察署でなくても手続きできる場合が多いですが、都道府県によって対応が異なるため、事前に電話で確認しておくと確実です。

運転免許センターは大規模な施設ですが、都道府県に1〜3か所程度しかないため、わざわざ足を運ぶ必要はないでしょう。なお、一部の都道府県では交番や駐在所でも受け付けている場合があります。

手続きに必要なもの

持参するものは基本的に3点です。

必要なもの備考
故人の運転免許証原本が必要。コピーは不可
死亡の事実がわかる書類死亡診断書のコピー、除籍謄本、住民票の除票のいずれか
届出人の本人確認書類運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど

死亡診断書は葬儀の際にコピーを5〜10部取っておくことが推奨されています。死亡届の提出時に原本を役所に渡してしまうため、事前にコピーを取り忘れた場合は、除籍謄本を本籍地の市区町村役場で取得して代用できます。住民票の除票は、故人の住所地の市区町村役場で取得可能です。

都道府県による違いに注意

自治体によっては、上記に加えて以下の書類を求められることがあります。

二度手間を避けるため、事前に届出先へ電話で持ち物を確認しておくことをおすすめします。電話であれば1〜2分で確認できます。

手続きの流れ

ステップ1: 届出先に連絡する

最寄りの警察署の代表番号に電話し、交通課に繋いでもらいます。以下を確認しましょう。

電話する際は「故人の運転免許証を返却したい」と伝えれば、担当部署に案内してもらえます。

ステップ2: 窓口で届出書を記入する

窓口に「免許証返納届」(名称は都道府県により異なります)が用意されています。記入する主な項目は以下の通りです。

書き方がわからない場合は、窓口の担当者が丁寧に教えてくれます。難しい書類ではないので安心してください。

ステップ3: 書類を提出する

記入した届出書と必要書類を窓口に提出します。担当者が内容を確認し、問題がなければその場で受理されます。手続き自体は10〜15分程度で完了します。手数料は一切かかりません。

ポイント

警察署なら手数料無料、所要時間は10〜15分程度で完了します。予約不要の場合がほとんどです。

ステップ4: 免許証の処理

提出後、免許証は警察署で回収・廃棄されます。形見として手元に残したい場合は、書類を提出する前に必ず申し出てください。一度回収された後では対応が難しくなることがあります(詳しくは後述します)。

届出できる人

届出人は、原則として故人の親族です。配偶者・子・父母・兄弟姉妹・祖父母・孫など、幅広い親族が届出可能です。同居している必要はなく、遠方に住んでいる親族でも手続きできます。

親族以外の方(同居人、成年後見人、遺言執行者など)が届出できるかどうかは都道府県や各警察署の運用によって異なります。該当する場合は、事前に電話で確認してください。

また、複数の親族のうち誰が届け出るかに特に決まりはありません。他の死後の手続きで警察署を訪れる機会がある方が、ついでに済ませるのが効率的です。

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返却しなかった場合のリスク

前述の通り、返却しなくても法的な罰則はありません。しかし、放置することにはいくつかのリスクがあります。

身分証としての悪用

運転免許証は顔写真付きの身分証明書として、銀行口座の開設、携帯電話の契約、クレジットカードの申請などに利用できます。万が一、免許証が第三者の手に渡った場合、なりすましによる不正利用が行われるおそれがあります。特に空き巣や遺品整理業者のトラブルなどで免許証が流出するケースも報告されています。

更新連絡書が届き続ける

免許証が有効期限内の場合、公安委員会から更新連絡書(ハガキ)が届くことがあります。故人宛の郵便物が届くたびに悲しみが蘇る方もいらっしゃいます。返却手続きを行えば、このような通知は届かなくなります。

有効期限切れで自然失効

返却しなくても、有効期限が過ぎれば免許証は自然に失効します。ただし、免許証の有効期間は最長5年(優良運転者の場合)あるため、失効するまでの間は上記のリスクが残り続けます。身分証の悪用リスクを考えると、期限切れを待つよりも早めに返却するほうが安心です

形見として保管する方法(穴あけ加工)

「免許証の写真を見ると元気だった頃を思い出す」「思い出の品として手元に残したい」という方は少なくありません。その場合でも、免許証をそのまま保管するのではなく、無効化した上で保管することを強くおすすめします。

穴あけ加工(パンチ処理)とは

警察署の窓口で「形見として保管したい」と申し出ると、免許証にパンチ穴をあけて無効化する処理をしてもらえます。これは自主返納の際にも行われるのと同じ処理です。穴あけ加工を施した免許証は、公的な身分証として使用できなくなるため、悪用のリスクなく安心して手元に保管できます。

穴の位置は顔写真や氏名にかからないよう配慮してもらえることが多いですが、対応は警察署によって異なります。

手続きの方法

  1. 通常の返納手続きと同じ書類を持参する
  2. 窓口で「免許証を形見として返還してほしい」旨を伝える
  3. 担当者がパンチ穴をあけて無効化する
  4. 無効化された免許証を受け取る

この処理に追加の手数料はかかりません。なお、一部の警察署では穴あけ加工に対応していない場合もあるため、事前に電話で「形見として返還してもらえるか」を確認しておくと安心です。

故人の車の名義変更・廃車手続きとの関連

免許証の返却と併せて確認しておきたいのが、故人名義の自動車やバイクの手続きです。車も遺産の一つであり、名義変更なしで使い続けることにはリスクがあります。故人名義のまま事故を起こした場合、任意保険が適用されないケースもあるため、早めの対応が重要です。

車を引き継ぐ場合(移転登録)

相続人が引き続き車を使用する場合は、管轄の運輸支局(軽自動車の場合は軽自動車検査協会)で名義変更(移転登録)を行います。

主な必要書類は以下の通りです。

相続人が1人の場合は遺産分割協議書が不要になるなど、状況によって必要書類は変わります。運輸支局に事前に確認するのが確実です。

車を廃車にする場合(永久抹消登録)

車を処分する場合は、まず解体業者に車を引き渡し、解体証明書を受け取ります。その後、運輸支局で永久抹消登録の手続きを行います。手続き後は自動車税の課税がストップし、年度途中であれば月割りで還付を受けられます。自動車重量税の還付もある場合があるため、税事務所にも確認しておきましょう。

自賠責保険・任意保険の手続き

車の名義変更や廃車に伴い、自賠責保険の名義変更・解約、任意保険の解約や等級の引き継ぎなども必要になります。保険会社に連絡して手続き方法を確認してください。

手続きのタイミング

車の名義変更には法律上の明確な期限はありませんが、故人名義のままだと車検の更新ができなかったり、売却ができなかったりと不便が生じます。相続が確定したら速やかに手続きを進めましょう。

名義変更・廃車のいずれも、法的には相続手続きが前提となります。相続手続き全体の流れについては「家族が亡くなったらやること一覧」で確認できます。

パスポートの返却についても

運転免許証と同様に、故人が**パスポート(旅券)**を所持していた場合も返却手続きを行いましょう。有効期限内のパスポートは身分証として使用可能な状態にあるため、返却しないまま放置すると、免許証と同じく悪用されるリスクがあります。

項目内容
届出先最寄りのパスポートセンター(旅券事務所)、または対応している市区町村の窓口
必要書類故人のパスポート、死亡を証明する書類(戸籍謄本・死亡診断書のコピーなど)、届出人の本人確認書類
手続き名一般旅券返納届
届出人親族
手数料無料
形見としての保管無効化処理(VOID印の押印・ICチップの無効化など)後に返還可能

パスポートセンターの所在地は各都道府県のホームページで確認できます。免許証の返却と同時期に済ませておくと、手続きの漏れを防げます。

運転免許証やパスポートに限らず、マイナンバーカードや健康保険証なども返却が必要です。身の回りの公的証明書の返却手続きは、亡くなった直後にやるべきことと併せて計画的に進めると漏れが少なくなります。健康保険証の手続きについては「健康保険の資格喪失届」もご参照ください。

よくある質問

Q. 免許証をなくしてしまった・見つからない場合はどうすればいいですか?

免許証が見つからない場合でも、警察署に届け出ることは可能です。窓口で免許証を紛失している旨を伝え、死亡の事実がわかる書類(死亡診断書のコピーや除籍謄本)と届出人の本人確認書類を持参してください。警察署の側で記録上の処理(死亡による失効の記録)をしてもらえます。これにより、更新連絡書の送付も停止されます。なお、免許証番号がわからなくても、故人の氏名と生年月日から照会できるため問題ありません。

Q. 手続きに期限はありますか?

法律上、明確な期限は設けられていません。そのため、亡くなった直後の慌ただしい時期に無理をして手続きする必要はありません。ただし、免許証は身分証として悪用されるリスクがあるため、できる限り速やかに手続きすることが推奨されています。実務上は、四十九日の法要が終わって落ち着いた頃に、世帯主変更届や年金の届出など、他の行政手続きとまとめて進める方が多いです。「死後の手続き一覧」を確認して、期限のある手続きを優先しつつ計画を立てるとよいでしょう。

Q. 有効期限が切れている免許証も返却が必要ですか?

有効期限が切れた免許証はすでに失効しているため、返却しなくても法的な問題はありません。ただし、顔写真付きの書類であることに変わりはないため、悪用防止の観点から対処しておくことをおすすめします。方法としては、警察署に返却する、ハサミで裁断して処分する、のいずれかが考えられます。形見として残したい場合は、ご自身で免許証の角を切り落とすか、表面にペンで大きく「無効」と記入するなど、一見して使用できない状態にしておくと安心です。

まとめ

故人の運転免許証の返却手続きは、法律上の義務ではないものの、身分証の悪用防止や更新通知の停止のために行っておくべき手続きです。手続き自体は簡単で、手数料もかかりません。

ポイントを整理します。

死後の手続きは数多くあり、すべてを一度に片付けるのは困難です。まずは期限のある手続き(死亡届、年金の届出、健康保険の届出など)を優先し、免許証の返却のように期限のないものは落ち着いてから進めましょう。何から手をつければよいか迷ったときは、「家族が亡くなったらやること一覧」を参考に、期限順に整理して計画を立ててみてください。

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