入院保険の死亡後請求 — 手続き方法・必要書類・期限を解説
目次
この記事のまとめ
- —入院給付金は死亡後でも遺族が請求できる
- —請求期限は3年で入院証明書の準備が必要
- —死亡保険金との税金の扱いの違いに注意
入院保険(医療保険)の死亡後請求とは
故人が医療保険や生命保険の医療特約に加入していた場合、入院中に亡くなったとしても入院給付金を請求できることをご存じでしょうか。
入院給付金とは、被保険者が病気やケガで入院した際に、入院日数に応じて保険会社から支払われるお金のことです。一般的には被保険者本人が退院後に請求するものですが、入院中に亡くなった場合や、退院後に請求しないまま亡くなった場合でも、遺族が代わりに請求できます。
大切な家族を亡くした直後は、葬儀の手配や死亡届の提出、年金や健康保険の手続きなど、やるべきことが山積みです。保険の請求は後回しになりがちですが、請求しなければ給付金は支払われません。請求期限もあるため、できるだけ早く手続きを始めることが大切です。
この記事では、入院保険の死亡後請求について、どのような場合に請求できるのか、誰が請求できるのか、手続きの流れ、必要書類、請求期限、そして生命保険の死亡保険金との違いまで、詳しく解説します。
請求できるケース
入院給付金を死亡後に請求できるのは、主に以下のようなケースです。
- 入院中に亡くなった場合 — 入院日から死亡日までの日数分の入院給付金を請求できます。入院して数日で亡くなった場合でも、その日数分は請求の対象になります
- 退院後に亡くなり、まだ給付金を請求していなかった場合 — 入院していた日数分を遺族が代わりに請求できます。退院からしばらく経ってから亡くなった場合でも、時効の範囲内であれば問題ありません
- 手術給付金が未請求だった場合 — 入院中に受けた手術について手術給付金が支払われる契約であれば、入院給付金と同様に遺族が請求できます
- 通院給付金が未請求だった場合 — 退院後の通院について通院給付金が支払われる特約があり、まだ請求していなかった場合も同様です
いずれの場合も、保険契約が有効であること(保険料の払込みが続いていたこと)が前提になります。保険料の滞納により契約が失効していないか、まず確認しましょう。保険料が口座引き落としの場合は、故人の通帳で直近の引き落とし状況を確認できます。
入院中に亡くなった場合も、退院後に請求しないまま亡くなった場合も、遺族が入院給付金を請求できます。死亡保険金と同時に請求すると書類を共有できて効率的です。
入院給付金の計算方法
入院給付金は、一般的に以下のように計算されます。
入院給付金 = 入院給付日額 x 入院日数
たとえば、入院給付日額が5,000円で、入院日から死亡日まで20日間であれば、5,000円 x 20日 = 10万円が支給されます。入院給付日額が10,000円の契約であれば、同じ20日間で20万円になります。
ただし、注意すべき点がいくつかあります。
- 支払限度日数 — 保険契約ごとに「1入院あたりの支払限度日数」が設定されています。60日型・120日型・180日型などがあり、限度日数を超えた分の入院日数は給付の対象外です
- 免責期間 — 古い保険契約の中には、入院開始から数日間は給付対象外となる「免責期間」が設けられているものもあります
- 入院日数の数え方 — 入院日を1日目として、死亡日(退院日)を含めた日数を数えます。日帰り入院の扱いは保険契約によって異なります
具体的な給付額は、保険証券や契約のしおりで確認できます。
請求できる人(受取人・相続人)
入院給付金を死亡後に請求できる人は、保険契約上の受取人が誰に指定されているかによって異なります。この点は税金の取り扱いにも影響するため、正確に把握しておく必要があります。
受取人が被保険者本人の場合
医療保険の入院給付金は、多くの場合被保険者本人が受取人に指定されています。本人が亡くなっている以上、入院給付金の請求権は相続財産の一部として法定相続人に引き継がれます。
法定相続人が複数いる場合は、入院給付金は遺産分割協議の対象となります。遺産分割協議が完了するまでは、共同相続人の共有財産という扱いです。ただし、実務上は代表相続人が一括して請求し、遺産分割協議の中で他の財産とあわせて分配方法を決めるケースが一般的です。遺産分割協議については「遺産分割協議の進め方」で詳しく解説しています。
受取人が被保険者以外に指定されている場合
配偶者や子どもなど、被保険者以外の人が受取人に指定されている場合は、指定された受取人がそのまま請求できます。この場合、入院給付金は受取人固有の財産となり、相続財産には含まれません。他の相続人の同意も不要です。
| 受取人の指定 | 請求できる人 | 財産の区分 |
|---|---|---|
| 被保険者本人 | 法定相続人(代表者が一括請求) | 相続財産(遺産分割協議の対象) |
| 配偶者など本人以外 | 指定された受取人 | 受取人固有の財産(相続財産に含まれない) |
受取人がどのように指定されているかは、保険証券で確認できます。保険証券が手元にない場合は、保険会社に問い合わせれば教えてもらえます。
手続きの流れ
入院給付金の死亡後請求は、以下の5つのステップで進めます。全体の所要期間は、書類の準備を含めて2週間〜1か月程度が目安です。
ステップ1: 保険会社への連絡
故人が加入していた保険会社のカスタマーセンターに電話で連絡します。多くの保険会社は平日の9時〜17時に受付をしていますが、一部の会社は土日も対応しています。このとき伝える情報は以下のとおりです。
- 被保険者(故人)の氏名・生年月日
- 証券番号(分かる場合)
- 死亡日と死亡原因の概要
- 入院期間
- 請求者の氏名と被保険者との続柄
連絡後、保険会社から請求に必要な書類一式と案内が郵送されてきます。届くまでに1週間程度かかるのが一般的です。死亡保険金も対象の場合は、両方の請求書類をまとめて送ってもらえます。
ステップ2: 必要書類の準備
保険会社からの案内に沿って書類を揃えます。特に入院証明書(診断書)は病院への依頼が必要で、時間がかかりやすいので早めに手配しましょう。書類の詳細は次の章で解説します。
ステップ3: 書類の提出
揃った書類を保険会社に郵送します。保険会社の窓口に持参することも可能です。書類に不備があると差し戻しになり、手続きが遅れる原因になります。提出前に、保険会社の案内書のチェックリストと照合して、漏れがないか確認しましょう。
ステップ4: 審査
保険会社が書類を確認し、給付金の支払い条件を満たしているかを審査します。一般的に、必要書類がすべて揃った状態で到着してから5営業日程度で審査が完了します。ただし、入院の原因や状況について追加の確認が必要な場合は、さらに時間がかかることもあります。
ステップ5: 給付金の入金
審査が完了すると、請求書に記載した指定口座に入院給付金が振り込まれます。振込完了後、保険会社から支払い明細書が送付されます。この明細書は相続税の申告や確定申告の際に必要になることがあるため、大切に保管してください。
必要書類
入院給付金の死亡後請求に一般的に必要な書類は以下のとおりです。保険会社や契約内容によって異なる場合があるため、必ず保険会社から届く案内書を確認してください。
| 書類 | 取得先・備考 |
|---|---|
| 保険金・給付金請求書 | 保険会社から送付される所定の用紙に記入 |
| 死亡診断書(死体検案書)のコピー | 病院で発行。死亡届の提出前にコピーを複数枚取っておく |
| 入院証明書(診断書) | 保険会社所定の用紙を入院先の病院に記入してもらう |
| 被保険者の戸籍謄本(除籍謄本) | 市区町村役場で取得。死亡の記載があり、相続人が確認できるもの |
| 請求者の戸籍謄本 | 市区町村役場で取得。被保険者との続柄を証明するために必要 |
| 請求者の本人確認書類 | 運転免許証・マイナンバーカード等のコピー |
| 振込先口座の情報 | 請求者名義の口座の通帳コピーまたはキャッシュカードのコピー |
| 保険証券 | 故人の自宅等で保管されているもの(紛失の場合は不要な場合あり) |
| 委任状(代表相続人が請求する場合) | 他の相続人全員からの委任状。保険会社所定の用紙を使用 |
入院証明書(診断書)について
入院証明書は、保険会社が用意した所定の用紙を入院先の病院に持参し、医師に記入してもらうものです。入院期間、傷病名、治療内容などが記載されます。
発行には1〜2週間程度かかるのが一般的です。また、病院への発行手数料として5,000円〜10,000円程度がかかります。この手数料は保険会社が負担してくれるケースは少ないため、自己負担となることがほとんどです。
なお、保険会社によっては、入院期間が短い場合や給付金額が少額の場合に、病院の領収書や診療明細書で入院証明書の代わりにできるケースもあります。事前に保険会社に確認してみてください。
請求期限(保険法で3年)
入院給付金の請求権には時効があります。保険法第95条により、保険給付の請求権は「権利を行使することができる時から3年」で消滅時効にかかります。
入院給付金の場合、時効の起算点は以下のとおりです。
- 入院中に死亡した場合 — 死亡日の翌日から起算して3年
- 退院後に死亡した場合 — 退院日の翌日から起算して3年(入院給付金の請求権は退院時に発生しているため)
たとえば、2026年3月1日に入院中に亡くなった場合、入院給付金の請求期限は2029年3月1日までとなります。
3年は一見余裕がありそうですが、死亡後の手続きは非常に多岐にわたるため、保険の請求を後回しにしているうちに時効が迫ってしまうことも珍しくありません。死亡後のお金の手続きの中でも、保険関係は早めに着手することをおすすめします。
入院給付金の請求期限は保険法第95条により3年です。3年を過ぎると原則として請求できなくなるため、他の手続きと並行して早めに着手してください。
なお、3年の時効を過ぎてしまった場合でも、保険会社が任意で対応してくれるケースもゼロではありません。多くの保険会社は、時効経過後も一定期間は請求に応じる方針を取っています。時効を過ぎていても、諦めずにまず保険会社に問い合わせてみてください。
生命保険の死亡保険金との違い
入院給付金と死亡保険金は、同じ保険会社から支払われることが多いため混同しがちですが、法的な性質や税金の取り扱いが大きく異なります。両方を請求できるケースも多いため、違いを正しく理解しておきましょう。
| 項目 | 入院給付金 | 死亡保険金 |
|---|---|---|
| 支払事由 | 入院・手術など | 被保険者の死亡 |
| 本来の受取人 | 多くの場合、被保険者本人 | 保険証券に指定された受取人 |
| 財産の区分 | 相続財産(受取人が本人の場合) | 受取人固有の財産(みなし相続財産) |
| 遺産分割協議 | 対象になる(受取人が本人の場合) | 原則として対象外 |
| 相続税の非課税枠 | 適用なし | 500万円 x 法定相続人の数 |
| 相続放棄した場合 | 受け取れない(受取人が本人の場合) | 受け取れる(受取人固有の財産のため) |
税金面の違いが特に重要
死亡保険金には「500万円 x 法定相続人の数」という相続税の非課税枠が適用されます。たとえば法定相続人が3人であれば、1,500万円までは非課税です。
一方、入院給付金(受取人が被保険者本人だった場合)にはこの非課税枠が適用されません。入院給付金は本来の相続財産として、全額が相続税の課税対象となります。
ただし、入院給付金の受取人が被保険者以外(たとえば配偶者)に指定されていた場合は、受取人固有の財産となり、相続税の課税対象にはなりません。さらに、身体の傷害に起因して支払われる給付金として所得税も非課税です。
相続税の申告が必要かどうかは「相続税の申告」で確認できます。
相続放棄との関係
相続放棄をした場合、入院給付金(受取人が被保険者本人のもの)は相続財産のため受け取れません。一方、死亡保険金は受取人固有の財産であるため、相続放棄をしても受け取ることができます。相続放棄を検討している場合は、この違いを理解した上で判断してください。相続放棄の期限については「相続放棄の期限」をご確認ください。
複数の保険に加入している場合
故人が複数の医療保険や生命保険に加入していた場合、それぞれの保険会社に対して個別に請求する必要があります。一つの保険会社にまとめて請求することはできません。
複数の保険から入院給付金を受け取ること自体はまったく問題ありません。入院給付金は定額払いが基本であり、各保険の契約内容に従って全額支給されます。
故人の保険加入状況を確認する方法
加入していた保険を特定するために、以下の手がかりを確認しましょう。
- 保険証券 — 自宅の金庫、書類棚、引き出しなどを丁寧に探す
- 通帳・口座の引き落とし履歴 — 保険料の引き落とし記録から保険会社を特定できる。銀行口座の手続きの際に確認するとよい
- 保険会社からの郵便物 — 契約内容の通知、保険料の払込案内、年1回送られる「ご契約内容の確認」ハガキなど
- 年末調整・確定申告の控除証明書 — 生命保険料控除の書類から加入先の保険会社を特定できる
- 勤務先の団体保険 — 会社の福利厚生として団体保険に加入している場合がある。故人の勤務先の人事・総務部門に問い合わせる
- 保険代理店やFP — 故人が特定の代理店やFPを通じて加入していた場合、担当者に連絡すると加入保険の一覧を教えてもらえることがある
保険証券が見つからない場合の対処法
故人がどの保険に加入していたか分からない場合でも、契約の有無を調べる方法があります。
生命保険契約照会制度
一般社団法人 生命保険協会が運営する「生命保険契約照会制度」を利用すれば、故人が国内の生命保険会社と契約を結んでいたかどうかを一括照会できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 利用料 | Web申請 3,000円(税込)※2026年4月以降はWeb 6,000円・書面 7,000円 に改定予定 |
| 照会できる人 | 法定相続人、遺言執行者、相続財産清算人など |
| 申請方法 | 生命保険協会のウェブサイト(オンライン)または郵送 |
| 必要書類 | 照会者の本人確認書類、故人の死亡診断書コピー、戸籍謄本(続柄確認用)など |
| 回答までの期間 | 手数料支払い確認後、約14営業日 |
照会の結果、契約の有無と保険会社名が通知されます。ただし、契約内容の詳細(入院給付金の日額や特約の有無など)までは分かりません。判明した保険会社に直接問い合わせて、具体的な契約内容と請求手続きを確認してください。
注意点として、契約が存在しなかった場合でも利用料は返金されません。また、照会できるのは生命保険会社の契約のみで、損害保険や共済については別途問い合わせが必要です。
よくある質問
Q1. 入院給付金の請求に相続人全員の同意は必要ですか?
保険会社によって対応が異なります。受取人が被保険者本人だった場合、入院給付金は相続財産となるため、原則として相続人全員の同意(または代表相続人への委任状)が必要です。ただし、少額の給付金については代表相続人のみで手続きできる保険会社もあります。事前に保険会社に確認しましょう。
Q2. 入院給付金に税金はかかりますか?
受取人の指定によって異なります。受取人が被保険者本人に指定されていた場合、入院給付金は相続財産に含まれるため相続税の課税対象になります。ただし、死亡保険金のような非課税枠(500万円 x 法定相続人の数)は適用されず、全額が課税対象です。一方、受取人が被保険者以外に指定されていた場合は、受取人固有の財産となるため相続税はかかりません。また、身体の傷害に起因して支払われる保険金・給付金は所得税法上も非課税とされているため、所得税もかかりません。
Q3. 入院給付金と死亡保険金は同時に請求できますか?
はい、同時に請求できます。同じ保険会社であれば、死亡保険金と入院給付金の請求をまとめて行うのが最も効率的です。保険会社に連絡する際に「死亡保険金と入院給付金の両方を請求したい」と伝えれば、必要書類を一度にまとめて案内してもらえます。死亡診断書のコピーや戸籍謄本など、共通して使える書類も多いため、別々に請求するより手間を大幅に減らせます。生命保険の請求手続きもあわせてご確認ください。
まとめ
入院給付金は、たとえ被保険者が亡くなった後でも遺族が請求できます。保険会社から自動的に支払われることはないため、故人の保険契約を確認し、早めに手続きを始めることが大切です。
手続きのポイントを整理します。
- 入院給付金は死亡日までの入院日数分を遺族が請求できる
- 受取人が本人の場合は法定相続人が請求権を相続する
- 必要書類は保険会社の案内に従い、入院証明書は早めに病院に依頼する(発行に1〜2週間かかる)
- 請求期限は保険法第95条により3年。他の手続きと並行して早めに進める
- 死亡保険金と入院給付金は同時に請求すると効率的
- 保険証券が見つからない場合は生命保険契約照会制度を活用する
- 故人の保険証券で入院給付金の契約内容を確認する
- 保険会社のカスタマーセンターに連絡し書類を取り寄せる
- 入院証明書(診断書)を入院先の病院に依頼する
- 必要書類を揃えて保険会社に提出する
- 審査完了後の入金と支払い明細書を確認・保管する
死亡後の手続き全体を把握したい方は「死亡後の手続き一覧」を、お金関連の手続きは「死亡後のお金の手続きまとめ」をご覧ください。
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