故人の自動車の名義変更・廃車手続き — 届出先・必要書類・流れ
目次
この記事のまとめ
- —故人名義のままでは車検更新や売却・廃車ができない
- —運輸支局で移転登録を行い相続人に名義変更する
- —軽自動車は協議書不要・認印で手続きでき大幅に簡素
はじめに
故人が所有していた自動車は、名義変更をしないまま放置すると車検の更新ができず、任意保険も適用されなくなります。売却や廃車もできません。
「車のことは後でいいだろう」と思いがちですが、故人名義のまま運転を続けると、万一の事故で保険が使えないリスクがあります。葬儀や死亡届の提出など優先度の高い手続きが落ち着いたら、早めに着手してください。
この記事では、故人名義の自動車を「引き継ぐ場合」「廃車にする場合」「売却する場合」の3パターンに分けて、届出先・必要書類・手続きの流れを解説します。軽自動車・バイクの手続きや、自動車税・保険の扱いについてもまとめました。
故人名義の車を放置するリスク
まず、名義変更をしないまま放置した場合に起きる問題を整理します。
車検の更新ができない
車検(自動車検査登録)は、所有者本人または正当な権限を持つ人が申請する必要があります。故人名義のままでは車検を更新できず、車検切れの車を公道で走らせると道路運送車両法違反になります。
任意保険が適用されない可能性がある
故人名義のままでは車検の更新ができず、任意保険も適用されない可能性があります。万一の事故で保険が使えないリスクがあるため、早めに名義変更しましょう。
自動車保険(任意保険)の契約者と実際の使用者が異なる状態が続くと、事故時に保険金が支払われないリスクがあります。自賠責保険は車両にかかる保険のため名義が異なっても有効ですが、更新案内が故人宛に届くため、気づかないうちに保険切れになる恐れがあります。
売却・廃車ができない
故人名義のままでは、車を売却することも廃車にすることもできません。いったん相続人に名義変更してからでないと、どの手続きも進められません。
自動車税の納税通知が届かなくなる
自動車税(種別割)の納税通知書は所有者宛に届きます。故人宛のまま放置すると通知を見落とし、延滞金が発生する可能性があります。
道路運送車両法上の罰則
道路運送車両法第12条では、相続など所有者の変更があった場合、15日以内に移転登録の申請をしなければならないと定めています。申請をしなかった場合、同法第109条により50万円以下の罰金が科される可能性があります。実務上はただちに罰則が適用されるケースは多くありませんが、放置するメリットはありません。
まず確認すること — 車検証の「所有者」欄
手続きを始める前に、車検証(自動車検査証)の「所有者の氏名又は名称」欄を確認してください。
- 所有者が故人本人 → 相続による名義変更(移転登録)が必要
- 所有者がディーラーやローン会社 → 所有権解除の手続きが先に必要(ローン完済後にディーラー等から書類を取り寄せる)
- 所有者が故人で、使用者が別の家族 → 相続による名義変更が必要
ローンが残っている場合は、まずローン会社に連絡して残債の精算方法を確認しましょう。
引き継ぐ場合の手続き(移転登録)
故人の車を相続人が引き継いで使い続ける場合は、管轄の運輸支局(陸運局)で「移転登録」を行います。
届出先
新しい所有者の住所地を管轄する運輸支局または自動車検査登録事務所です。管轄は国土交通省のウェブサイトで確認できます。
必要書類
| 書類 | 備考 |
|---|---|
| 自動車検査証(車検証) | 車内に保管されているもの |
| 故人の除籍謄本または戸籍謄本 | 死亡の事実と相続人との関係が確認できるもの |
| 遺産分割協議書 | 相続人全員の署名・実印が必要。車の査定額が100万円以下の場合は「遺産分割協議成立申立書」で代用可(相続人1名の実印のみで可) |
| 新所有者の印鑑証明書 | 発行日から3か月以内のもの |
| 新所有者の実印 | 申請書への押印用 |
| 車庫証明書(自動車保管場所証明書) | 保管場所が変わる場合に必要。変わらない場合は不要 |
| 移転登録申請書(OCRシート第1号様式) | 運輸支局の窓口で入手 |
| 手数料納付書 | 運輸支局の窓口で入手(収入印紙500円分を貼付) |
| 自動車税申告書 | 運輸支局内の税申告窓口で入手・提出 |
遺産分割協議書の書き方については「遺産分割協議のやり方 — 協議書の書き方・必要書類・注意点」で詳しく解説しています。
手続きの流れ
- 戸籍謄本・印鑑証明書を取得する — 市区町村役場で取得します。住民票・除票の取り方も参考にしてください
- 遺産分割協議を行い、車の取得者を決める — 協議書に相続人全員が署名・実印を押印する
- 車庫証明を取得する(保管場所が変わる場合)— 管轄の警察署に申請。交付まで3〜7日程度
- 運輸支局で移転登録を申請する — 上記の書類一式を提出
- 自動車税の申告を行う — 運輸支局内の税申告窓口で手続き
- 新しい車検証を受け取る
- ナンバープレートの変更(管轄が変わる場合)— 旧ナンバーを返却し、新ナンバーを取り付け
手続きにかかる費用は、収入印紙代500円のほか、車庫証明の取得費用(2,500〜3,000円程度)、ナンバープレート代(約1,500円)などを合わせて、合計4,000〜5,000円程度です。
- 車検証の「所有者」欄を確認する(ローン会社名義の場合は所有権解除が先)
- 遺産分割協議で車の取得者を決める
- 故人の除籍謄本・新所有者の印鑑証明書を取得する
- 車庫証明を取得する(保管場所が変わる場合)
- 運輸支局で移転登録を申請する
- 自賠責保険・任意保険の名義変更または解約を行う
100万円以下の車の場合の簡略化
車の査定額が100万円以下であれば、遺産分割協議書の代わりに「遺産分割協議成立申立書」を使うことができます。この書類は相続人1名の実印と印鑑証明書だけで作成できるため、手続きが大幅に簡略化されます。査定額を証明する書類(買取業者の査定書など)の添付が必要です。
廃車にする場合の手続き(永久抹消登録)
車が古い、走行距離が多いなどの理由で廃車にする場合は、「永久抹消登録」の手続きを行います。
手続きの流れ
- 解体業者に車の解体を依頼する — 都道府県知事の認可を受けた解体業者に依頼します。リサイクル料金が未払いの場合は、この時点で支払いが必要です
- 解体完了の報告を受ける — 解体業者から「移動報告番号」と「解体記録日」が通知されます
- 運輸支局で永久抹消登録を申請する — 解体の報告後15日以内に手続きします
届出先
故人(旧所有者)の住所地を管轄する運輸支局です。
必要書類
| 書類 | 備考 |
|---|---|
| 自動車検査証(車検証) | 紛失時は理由書で代用可 |
| ナンバープレート(前後2枚) | 返却が必要 |
| 故人の除籍謄本または戸籍謄本 | 死亡の事実が確認できるもの |
| 遺産分割協議書 | 相続人全員の署名・実印(100万円以下は申立書で代用可) |
| 新所有者(相続人)の印鑑証明書 | 発行日から3か月以内 |
| 永久抹消登録申請書(第3号様式の3) | 運輸支局の窓口で入手 |
| 手数料納付書 | 運輸支局の窓口で入手(永久抹消登録の手数料は無料) |
| リサイクル券 | 解体時に受け取ったもの |
自動車重量税の還付
車検の有効期間が1か月以上残っている場合、永久抹消登録と同時に自動車重量税の還付申請ができます。還付額は、車検残存期間に応じて月割りで計算されます。還付金は指定した口座に振り込まれます。相続人が複数いる場合は「自動車重量税還付申請書付表3」の提出が必要です。
一時抹消登録という選択肢
「すぐには廃車にしないが、当面は使わない」という場合は、「一時抹消登録」も選択肢です。一時抹消すると自動車税の課税が止まり、再度使用する際に「中古新規登録」で復活できます。手数料は350円です。
売却する場合の手続き
故人の車を売却する場合でも、まず相続人への名義変更(移転登録)が必要です。故人名義のまま第三者に売却することはできません。
手続きの流れ
- 遺産分割協議で車の取得者を決める
- 代表相続人に名義変更する(上記「引き継ぐ場合」と同じ手続き)
- 買取業者またはディーラーに査定を依頼する
- 売買契約を結び、売却先への名義変更を行う
買取業者によっては、相続による名義変更と売却先への名義変更を同時に代行してくれるところもあります。手間を省きたい場合は、買取業者に相談してみてください。
軽自動車の場合
軽自動車は普通自動車とは手続き先や必要書類が異なります。
届出先
新しい使用者の住所地を管轄する軽自動車検査協会の事務所・支所・分室です。
普通自動車との大きな違い
軽自動車は普通自動車と異なり「登録」ではなく「届出」の制度です。そのため、手続きが大幅に簡素化されています。
- 遺産分割協議書が不要 — 軽自動車は相続財産としての登録制度がないため、遺産分割協議書の提出は求められません
- 印鑑証明書が不要 — 認印で手続き可能です
- 手数料が無料 — 名義変更の手数料はかかりません
軽自動車の名義変更は遺産分割協議書・印鑑証明書が不要で、認印・手数料無料で手続きできます。普通自動車に比べて大幅に簡素です。
必要書類
| 書類 | 備考 |
|---|---|
| 自動車検査証(車検証) | 車内に保管されているもの |
| 戸籍謄本 | 故人の死亡の事実と新所有者が相続人であることが確認できるもの。コピー可 |
| 自動車検査証記入申請書(OCRシート第2号様式) | 軽自動車検査協会の窓口で入手 |
| 新使用者の住民票 | 発行日から3か月以内。マイナンバーが記載されていないもの |
| ナンバープレート | 管轄が変わる場合のみ返却が必要 |
法定相続情報一覧図がある場合は、戸籍謄本の代わりに提出できます(コピー可。ただしカメラ撮影のものは不可)。
軽自動車の廃車手続き
軽自動車を廃車にする場合は、軽自動車検査協会で「解体返納」(普通自動車の永久抹消登録に相当)の手続きを行います。一時的に使用を中止する場合は「自動車検査証返納届」(一時使用中止)を提出します。
自動車税・自動車重量税の扱い
自動車税(種別割)
自動車税は毎年4月1日時点の所有者に課税されます。年度途中で名義変更をしても、普通自動車の場合は月割りでの還付・追加課税はありません(軽自動車税も同様に年額課税で月割りなし)。
ただし、廃車(永久抹消登録・一時抹消登録)をした場合は、普通自動車に限り翌月以降の税額が月割りで還付されます。
故人宛に届いた自動車税の納税通知書は、相続人が納付する義務があります。納付が遅れると延滞金が発生するため、届いたら速やかに支払ってください。相続人が確定していない場合は、都道府県税事務所に連絡して相談しましょう。
自動車重量税
自動車重量税は車検時に前払いで納付する税金です。永久抹消登録をした場合に限り、車検の残存期間に応じて月割りで還付を受けられます。前述のとおり、永久抹消登録と同時に還付申請を行います。
自賠責保険・任意保険の手続き
自動車の名義変更とあわせて、保険の手続きも忘れずに行いましょう。
自賠責保険
自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)は法律で加入が義務付けられている保険です。車両にかかる保険のため、名義が変わっても保険自体は有効ですが、更新案内が届かなくなるリスクがあるため名義変更をしておきましょう。
- 引き継ぐ場合 — 保険会社に連絡して契約者を相続人に変更します。手数料は無料です
- 廃車にする場合 — 永久抹消登録後に保険会社に連絡し、解約手続きを行います。未経過期間分の保険料が返金されます
必要書類は保険会社によって異なりますが、一般的に車検証、死亡を証明する書類(除籍謄本など)、新契約者の本人確認書類が求められます。
任意保険(自動車保険)
任意保険は名義変更をしないまま事故を起こすと、保険金が支払われないリスクがあります。車を引き継ぐことが決まったら、すぐに保険会社に連絡してください。
- 引き継ぐ場合 — 契約者を相続人に変更します。同居の親族が引き継ぐ場合は等級(ノンフリート等級)を引き継ぐことが可能です
- 廃車・売却する場合 — 解約手続きを行います。年払いの場合は未経過分の保険料が返金されます
- 別の車に乗り換える場合 — 車両入替の手続きを行い、保険を新しい車に移すことができます
故人の等級が高い(割引率が大きい)場合は、同居親族への等級引き継ぎが特に有用です。保険会社に早めに相談してください。
自動車保険(任意保険)の名義変更・解約手続きの詳細は「NHK・自動車保険の名義変更」で詳しく解説しています。各種保険の手続き全般については「死亡後のお金に関する手続き」も参考にしてください。
バイクの場合の手続き
バイク(二輪車)の場合は、排気量によって届出先と手続きが異なります。
125cc以下(原動機付自転車)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 届出先 | 市区町村役場 |
| 手続き | 旧所有者の廃車手続き → 新所有者の登録手続き |
| 必要書類 | 標識交付証明書、ナンバープレート、届出人の本人確認書類 |
| 手数料 | 無料 |
原付バイクの場合、まず故人の住所地の市区町村役場で廃車手続きを行い、その後に新所有者の住所地の役場で新規登録を行います。遺産分割協議書は不要です。
126cc〜250cc(軽二輪車)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 届出先 | 運輸支局(陸運局) |
| 手続き | 名義変更(届出) |
| 必要書類 | 軽自動車届出済証、自賠責保険証明書、届出人の本人確認書類、住民票 |
| 手数料 | 無料 |
251cc以上(小型二輪車)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 届出先 | 運輸支局(陸運局) |
| 手続き | 移転登録 |
| 必要書類 | 自動車検査証(車検証)、自賠責保険証明書、届出人の印鑑、住民票 |
| 手数料 | 無料 |
バイクの場合、普通自動車と比べて手続きが簡素で、遺産分割協議書が求められないケースがほとんどです。ただし、いずれの排気量でも、売却・廃車の前に名義変更が必要な点は自動車と同じです。
なお、故人の運転免許証の返却については「故人の運転免許証の返却 — 届出先・必要書類・手続きの流れ」で解説しています。
手続きを専門家に依頼する場合
自動車の相続手続きは、行政書士に依頼することで代行してもらえます。
- 依頼できる範囲 — 戸籍謄本の取り寄せ、遺産分割協議書の作成、運輸支局での移転登録申請など
- 費用の目安 — 2〜5万円程度(書類の取得費用・実費は別途)
- メリット — 平日に運輸支局に行く時間がない方、書類の作成に不安がある方に向いている
相続手続き全般を依頼する場合は、司法書士や弁護士にまとめて相談するのも一つの方法です。相続全体の流れについては「相続手続きの全体ガイド — 何から始める?流れと期限を解説」を参考にしてください。
手続きのチェックリスト
最後に、故人の自動車に関する手続きを一覧にまとめます。死後の手続き全体を把握したい方は「家族が亡くなったらやること一覧」もあわせてご覧ください。
| やること | 届出先 | 目安の時期 |
|---|---|---|
| 車検証の所有者欄を確認する | — | できるだけ早く |
| 遺産分割協議で車の取得者を決める | — | 相続人確定後 |
| 車庫証明を取得する(保管場所が変わる場合) | 警察署 | 名義変更前 |
| 名義変更(移転登録)を申請する | 運輸支局 | 所有者変更から15日以内 |
| 自動車税の申告を行う | 運輸支局内の税窓口 | 名義変更と同時 |
| 自賠責保険の名義変更または解約 | 保険会社 | 名義変更後すみやかに |
| 任意保険の名義変更または解約 | 保険会社 | 名義変更後すみやかに |
| 廃車にする場合は解体業者に依頼 | 解体業者 | 廃車を決めた時点 |
| 永久抹消登録を申請する | 運輸支局 | 解体報告後15日以内 |
よくある質問(FAQ)
Q. 故人名義のまま車を運転しても問題ありませんか?
法律上、故人名義のまま車を運転すること自体が直ちに違法となるわけではありません。ただし、名義変更をしないまま放置すると、車検の更新ができない、任意保険が適用されない可能性がある、売却や廃車ができないなど、複数のリスクがあります。道路運送車両法では所有者の変更から15日以内に移転登録を行うことが定められており、違反すると50万円以下の罰金が科される可能性もあります。事故や車検切れのリスクを避けるためにも、早めの名義変更をおすすめします。
Q. 相続人が複数いる場合、全員の書類が必要ですか?
普通自動車の場合、原則として遺産分割協議書に相続人全員の署名・実印が必要です。ただし、車の査定額が100万円以下であれば「遺産分割協議成立申立書」を使用でき、この場合は車を取得する相続人1名の実印と印鑑証明書のみで手続きできます。軽自動車の場合は遺産分割協議書自体が不要で、認印で手続きできます。
Q. ローンが残っている車はどうすればよいですか?
ローンが残っている場合、車検証の「所有者」欄がローン会社やディーラー名義になっていることが多いです。この場合、まずローン会社に連絡して残債を確認し、精算方法を相談してください。残債を一括返済するか、相続人がローンを引き継ぐかを決めた上で、所有権解除の書類を取り寄せてから名義変更を行います。残債の精算が難しい場合は、車を売却してローン返済に充てることも検討しましょう。
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