遺言書の書き方 — 自筆証書と公正証書の違い・注意点
目次
この記事のまとめ
- —遺言書には3種類あり、一般的には自筆証書か公正証書を選ぶ
- —自筆証書遺言は全文・日付・氏名を自書し押印が必要(民法968条)
- —法務局の保管制度を使えば検認不要で紛失リスクも防げる
はじめに
「遺言書を書きたいけれど、何をどう書けばいいのか分からない」——そう感じている方は多いのではないでしょうか。
遺言書は、自分の財産を誰にどう分けるかを法的に確定させるための書類です。正しい方法で書かなければ無効になってしまうため、ルールを理解したうえで作成することが大切です。
この記事では、遺言書の3種類の違いと、自筆証書遺言・公正証書遺言それぞれの具体的な書き方を解説します。
遺言書の3つの種類
民法で定められた普通方式の遺言書には、次の3種類があります。
| 種類 | 特徴 | 費用の目安 | 証人 |
|---|---|---|---|
| 自筆証書遺言 | 自分で全文を手書き | 無料〜数千円 | 不要 |
| 公正証書遺言 | 公証人が作成 | 数万円〜十数万円 | 2人以上 |
| 秘密証書遺言 | 内容を秘密にして公証人に提出 | 11,000円 | 2人以上 |
実務上よく使われるのは 自筆証書遺言 と 公正証書遺言 の2つです。秘密証書遺言はほとんど利用されていません。
自筆証書遺言の書き方
自筆証書遺言は、民法968条の要件を満たす必要があります。
有効要件(民法968条)
- 遺言者が全文を自書すること — パソコンや代筆は不可(ただし財産目録は例外)
- 日付を自書すること — 「令和〇年〇月〇日」と特定できる記載が必要。「〇月吉日」は無効
- 氏名を自書すること — 戸籍上の氏名が望ましい
- 押印すること — 実印でなくても有効だが、実印が望ましい
2019年の民法改正により、財産目録についてはパソコンで作成したものや、通帳のコピーを添付することが認められました。ただし、財産目録の各ページに署名・押印が必要です。
書き方の例
遺言書
遺言者 山田太郎は、次のとおり遺言する。
第1条 遺言者は、下記の不動産を妻 山田花子(昭和35年4月1日生)に相続させる。
所在 東京都〇〇区〇〇町一丁目
地番 2番3
地目 宅地
地積 150.00平方メートル
第2条 遺言者は、〇〇銀行〇〇支店の遺言者名義の普通預金(口座番号1234567)を
長男 山田一郎(平成2年8月15日生)に相続させる。
第3条 前各条に記載のない遺言者の有する一切の財産を、妻 山田花子に相続させる。
第4条 本遺言の遺言執行者として、次の者を指定する。
住所 東京都〇〇区〇〇町3-4-5
弁護士 鈴木次郎
付言事項
家族のみんなへ。長い間支えてくれてありがとう。仲良く暮らしてほしいと願っています。
令和7年3月15日
東京都〇〇区〇〇町1-2-3
山田太郎 印
「相続させる」と「遺贈する」は法的効果が異なります。相続人に財産を渡す場合は「相続させる」、相続人以外に渡す場合は「遺贈する」と書きましょう。相続登記の手続きも「相続させる」の方が簡便です。
自筆証書遺言でやりがちなミス
- 日付を「令和〇年〇月吉日」と書く → 無効
- 夫婦連名で1通の遺言書を作成する → 無効(共同遺言の禁止・民法975条)
- 訂正方法を間違える → 民法968条3項の方式に従わないと無効になる
公正証書遺言の書き方
公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成する遺言書です。法的に最も確実な方法といえます。
作成の流れ
- 事前準備 — 遺言内容を考え、必要書類を揃える
- 公証役場に相談 — 最寄りの公証役場に連絡し、内容を打ち合わせ
- 証人2人の手配 — 利害関係のない成年者(推定相続人・受遺者とその配偶者・直系血族は不可)
- 作成当日 — 遺言者が口述し、公証人が筆記。遺言者・証人が確認後に署名・押印
必要書類
- 遺言者の印鑑登録証明書(発行後3か月以内)
- 遺言者と相続人の関係がわかる戸籍謄本
- 受遺者の住民票(相続人以外に財産を渡す場合)
- 不動産の登記事項証明書・固定資産評価証明書
- 預貯金の通帳コピーまたは残高証明書
公証人手数料
公証人手数料令に基づき、遺言に記載する財産の価額に応じて手数料が決まります。
| 目的の価額 | 手数料 |
|---|---|
| 100万円以下 | 5,000円 |
| 200万円以下 | 7,000円 |
| 500万円以下 | 11,000円 |
| 1,000万円以下 | 17,000円 |
| 3,000万円以下 | 23,000円 |
| 5,000万円以下 | 29,000円 |
| 1億円以下 | 43,000円 |
| 3億円以下 | 43,000円+5,000円/5,000万円ごと |
財産の総額が1億円以下の場合、上記に11,000円が加算されます(遺言加算)。
法務局における自筆証書遺言の保管制度
2020年7月10日から始まった制度で、自筆証書遺言を法務局(遺言書保管所)に預けることができます。
メリット
- 紛失・改ざんのリスクがない
- 家庭裁判所での 検認が不要 になる
- 遺言者の死亡後、相続人に通知される仕組みがある
手数料
- 保管の申請: 3,900円
- 閲覧(モニター): 1,400円
- 閲覧(原本): 1,700円
- 遺言書情報証明書の交付: 1,400円
遺言書の探し方や検認手続きについては「遺言書の探し方と検認手続き」で詳しく解説しています。
遺言執行者の指定
遺言書の内容を確実に実現するために、遺言執行者を指定しておくことをおすすめします。遺言執行者は相続人の中から選ぶこともできますが、トラブルを避けるため弁護士や司法書士などの専門家に依頼するケースも多くあります。
遺言書の内容が遺留分を侵害している場合、相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。特に配偶者や子がいる場合は、遺留分に配慮した内容にすることが重要です。
付言事項の活用
付言事項とは、遺言書の中で法的効力のある事項以外に記載するメッセージのことです。法的拘束力はありませんが、遺言の背景や家族への感謝を伝えることで、相続人間のトラブルを防ぐ効果があります。
例えば「長男には介護で負担をかけたため、多めに相続させます」といった理由を書いておくと、他の相続人の理解を得やすくなります。
なお、遺言書では対応できない葬儀・埋葬・契約解約などの事務手続きについては「死後事務委任契約」をご覧ください。エンディングノートと併用する場合は「エンディングノートの書き方」も参考にしてください。
- 遺言書の種類(自筆証書 or 公正証書)を決めた
- 財産の一覧を作成した
- 相続人・受遺者を確認した
- 遺言執行者を決めた
- 自筆証書の場合: 全文・日付・氏名を自書し押印した
- 法務局の保管制度または公正証書の利用を検討した
まとめ
遺言書は、家族間のトラブルを防ぎ、自分の意思を確実に反映させるための重要な書類です。自筆証書遺言は手軽に作成できますが、要件不備で無効になるリスクがあります。確実性を求めるなら公正証書遺言がおすすめです。
どちらの方法を選ぶ場合でも、法務局の保管制度の活用を検討してください。また、遺留分への配慮と遺言執行者の指定を忘れずに。認知症対策としての財産管理は「家族信託」も選択肢の一つです。法定相続人が誰になるか不明な場合は「法定相続人の調べ方」を参考に確認しておきましょう。
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