相続税の基礎控除とは?計算方法と申告不要の判断基準
目次
この記事のまとめ
- —基礎控除額は3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算
- —遺産総額が基礎控除以下なら相続税はかからず申告も不要
- —死亡保険金・死亡退職金には別途非課税枠がある
はじめに
「相続税って、うちにも関係あるの?」——相続が発生したとき、まず気になるのがこの問題です。
結論から言えば、相続税がかかるのは遺産総額が 基礎控除額 を超える場合だけです。実際に相続税を納めているのは、亡くなった方のうち約9%程度(2023年・国税庁統計)。多くの方は基礎控除の範囲内に収まっています。
この記事では、基礎控除額の計算方法と、相続税の申告が必要かどうかの判断基準を解説します。
基礎控除の計算式
相続税の基礎控除額は、次の計算式で求めます(相続税法15条)。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
法定相続人の数ごとの基礎控除額
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
| 5人 | 6,000万円 |
例えば、配偶者と子2人が相続人であれば、法定相続人は3人なので基礎控除額は4,800万円。遺産総額がこの金額以下なら、相続税はかからず、申告も不要です。
法定相続人のカウント方法
基礎控除の計算で使う「法定相続人の数」には、いくつかの注意点があります。
相続放棄した人の扱い
相続放棄をした人がいても、基礎控除の計算では 放棄がなかったものとして カウントします(相続税法15条2項)。つまり、放棄によって基礎控除額が減ることはありません。
養子の扱い
法定相続人に含められる養子の数には制限があります(相続税法15条2項)。
- 実子がいる場合: 養子は 1人 まで
- 実子がいない場合: 養子は 2人 まで
ただし、特別養子縁組による養子や、配偶者の連れ子を養子にした場合は実子として扱われます。
法定相続人が誰になるか分からない場合は、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本を取得して確認します。詳しくは「法定相続人の調べ方」をご覧ください。
遺産総額の計算
基礎控除額と比較する「遺産総額」は、次のように計算します。
課税価格の計算式
課税価格 = プラスの財産 − マイナスの財産(債務・葬式費用) + 生前贈与加算分 − 非課税財産
プラスの財産(課税対象)
- 現金・預貯金
- 不動産(土地・建物)
- 有価証券(株式・投資信託・債券)
- 生命保険金(みなし相続財産)
- 死亡退職金(みなし相続財産)
- 自動車・貴金属・骨董品
- ゴルフ会員権
- 貸付金・未収入金
マイナスの財産(控除できるもの)
- 借入金・住宅ローンの残債
- 未払いの医療費
- 未払いの税金(固定資産税・住民税など)
- 葬式費用(通夜・告別式・火葬費用など。ただし香典返しは含まない)
非課税財産
相続税の計算上、課税されない財産があります。
死亡保険金の非課税枠
相続人が受け取る死亡保険金には、次の非課税枠があります(相続税法12条1項5号)。
非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数
例えば法定相続人が3人なら、1,500万円まで非課税です。
死亡退職金の非課税枠
死亡退職金にも同様の非課税枠があります(相続税法12条1項6号)。
非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数
その他の非課税財産
- 墓地・墓石・仏壇・仏具(日常礼拝に使用しているもの)
- 国・地方公共団体・特定の公益法人に寄附した財産
- 心身障害者扶養共済制度の給付金を受ける権利
課税判断のフロー
相続税がかかるかどうかは、次の手順で判断します。
- 法定相続人を確定する — 戸籍謄本で確認
- 基礎控除額を計算する — 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
- 遺産総額を計算する — プラスの財産から債務・葬式費用を差し引く
- 非課税枠を差し引く — 死亡保険金・退職金の非課税枠を適用
- 生前贈与加算を足す — 死亡前7年以内の暦年贈与(段階適用)
- 比較する — 課税価格の合計 ≦ 基礎控除額 → 申告不要
基礎控除以下であっても、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を適用して「結果的に基礎控除以下になる」場合は、申告が必要です。これらの特例は申告することが適用の条件となっています。
相続税の税率
基礎控除を超えた部分(課税遺産総額)を法定相続分で按分し、各人に次の税率を適用して税額を計算します。
| 法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | — |
| 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
主な税額控除
算出された相続税額から、さらに次の控除を差し引くことができます。
- 配偶者の税額軽減 — 配偶者が取得した財産が法定相続分以下、または1億6,000万円以下であれば相続税がかからない
- 未成年者控除 — (18歳 − 相続時の年齢)× 10万円
- 障害者控除 — (85歳 − 相続時の年齢)× 10万円(特別障害者は20万円)
- 法定相続人を戸籍謄本で確認した
- 基礎控除額(3,000万円+600万円×人数)を計算した
- プラスの財産を一覧にした
- マイナスの財産(債務・葬式費用)を差し引いた
- 死亡保険金・退職金の非課税枠を適用した
- 課税価格と基礎控除額を比較した
- 基礎控除を超える場合は税理士への相談を検討した
まとめ
相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。遺産総額がこの金額以下であれば、相続税はかからず申告も不要です。
ただし、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を使って基礎控除以下になる場合は、申告が必要な点に注意してください。判断に迷う場合は、早めに税理士に相談することをおすすめします。
相続税の申告手続きの詳細は「相続税の申告手続き」、生前の対策については「生前贈与の基本と相続税対策」をご覧ください。
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