生活・名義変更

賃貸住宅の名義変更・解約手続き — 故人が契約者の場合

更新日: 2026/2/27読了: 25分

この記事のまとめ

  • 賃借権は相続の対象で自動消滅しない
  • 同居家族は名義変更で住み続けられる
  • 解約時は原状回復費用と日割り家賃に注意

はじめに

賃貸住宅の契約者が亡くなった場合、「契約はどうなるのか」「すぐに退去しなければならないのか」と不安に感じる方は多いです。結論からお伝えすると、賃借権は相続の対象であり、契約者が亡くなっても賃貸借契約は自動的には終了しません。

同居していた家族がいる場合は名義変更(承継)の手続きをすれば、そのまま住み続けることができます。一方、故人が一人暮らしだった場合は、相続人が解約と退去の手続きを行うことになります。

この記事では、同居家族がいる場合の名義変更、一人暮らしだった場合の解約手続き、原状回復費用の負担ルール、連帯保証人の取扱い、公営住宅の特則まで、実務的な流れをまとめて解説します。

賃借権は相続される — 契約は自動消滅しない

賃借権(賃貸借契約上の借主の地位)は、民法上の相続財産に含まれます。契約者が亡くなっても、貸主(大家)から一方的に契約を解除されることはありません。

相続人が複数いる場合、賃借権は遺産分割が完了するまで相続人全員の共有となります。つまり、相続人全員が連帯して賃料を支払う義務を負う状態になります。

ただし、実務上は管理会社や大家に速やかに連絡し、名義変更(承継)か解約かの方針を伝えることが大切です。連絡が遅れると家賃の引き落としが止まり、延滞扱いとなるおそれがあります。

同居家族がいる場合 — 名義変更(承継)の手続き

故人と同居していた配偶者やお子様がそのまま住み続ける場合は、賃貸借契約の名義変更(承継)を行います。

手続きの流れ

  1. 管理会社または大家に連絡 — 契約者が亡くなった旨を伝え、名義変更を希望することを申し出る
  2. 必要書類の準備 — 管理会社から案内される書類を揃える
  3. 書類の提出・審査 — 新しい契約者としての審査(収入審査など)が行われる場合がある
  4. 新契約書の締結 — 審査に通れば、新しい名義での賃貸借契約書を取り交わす
  5. 支払い方法の変更 — 家賃の引き落とし口座やクレジットカードを変更する

必要書類の一般的な例

書類備考
死亡の事実がわかる書類死亡診断書のコピー、除籍謄本、住民票の除票など
新契約者の本人確認書類運転免許証、マイナンバーカードなど
新契約者の収入証明書源泉徴収票、確定申告書の写しなど(求められる場合)
故人との関係がわかる書類戸籍謄本、住民票など
新しい連帯保証人に関する書類保証人の印鑑証明書・収入証明書など(必要な場合)

管理会社や物件によって必要書類は異なります。まずは電話で連絡し、何が必要かを確認してから準備を進めてください。

収入審査について

名義変更の際に、新しい契約者の収入審査が行われることがあります。たとえば、故人が世帯の主たる収入者だった場合、残された配偶者の収入だけで家賃を支払えるかどうかが問われます。審査に通らない場合は、連帯保証人を追加する、家賃保証会社を利用するなどの対応を求められることがあります。

内縁関係・事実婚のパートナーの場合

法律上の婚姻関係にない内縁のパートナーは法定相続人ではないため、賃借権を相続することはできません。ただし、借地借家法第36条により、相続人がいない場合は、同居していた事実上の夫婦や養親子関係にある同居者が賃借権を承継できると定められています。相続人がいる場合でも、相続人の同意があれば名義変更が認められるケースもあります。管理会社や大家に事情を説明し、個別に相談してください。

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同居家族がいない場合 — 解約・退去の手続き

故人が一人暮らしだった場合は、相続人が賃貸借契約の解約手続きを行い、部屋を明け渡す必要があります。

解約手続きの流れ

  1. 管理会社または大家に連絡 — 契約者の死亡と解約の意思を伝える
  2. 解約届の提出 — 管理会社所定の解約届(退去届)を提出する
  3. 遺品整理・残置物の撤去 — 室内の荷物をすべて搬出する
  4. 退去立ち会い — 管理会社の担当者と室内の状態を確認する
  5. 鍵の返却 — すべての鍵(合鍵含む)を返却する
  6. 原状回復費用の精算 — 敷金との相殺後、差額があれば支払いまたは返金を受ける
注意

賃貸借契約の解約は、一般的に1か月前の申入れが必要です(契約書に記載の予告期間を確認してください)。予告期間を過ぎるとその分の家賃が発生するため、解約の意思が固まったら早めに連絡しましょう。また、室内の残置物(家具・家電・生活用品)は相続人の責任で撤去する必要があります。放置すると追加費用を請求される場合があります。

遺品整理のスケジュール

解約予告期間内に遺品整理を完了させるのが理想ですが、物量が多い場合や遠方に住んでいる場合は難しいこともあります。管理会社に事情を説明すれば、退去期限を多少延長してもらえるケースもあります。ただし、延長した期間の家賃は発生しますので、その点は了承が必要です。

遺品整理の進め方や業者への依頼については「遺品整理の進め方」で詳しく解説しています。

原状回復費用の負担ルール

退去時に最も気になるのが原状回復費用です。「高額な修繕費を請求されるのではないか」と心配される方も多いですが、通常の使用による損耗(経年劣化)は貸主負担であり、借主が負担する必要はありません。

借主負担と貸主負担の分け方

区分具体例負担者
通常損耗・経年劣化日焼けによる壁紙の変色、家具設置によるカーペットのへこみ、画鋲の穴貸主(大家)
借主の故意・過失による損耗タバコのヤニ汚れ、ペットによる傷、釘やネジの大きな穴、引っ越し時の傷借主(相続人)
借主の善管注意義務違反結露を放置したことによるカビ、清掃を怠ったことによる著しい汚れ借主(相続人)
ポイント

国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、通常の使用による損耗は貸主負担と明記されています。退去時に高額な修繕費を請求された場合は、このガイドラインを根拠に交渉することができます。管理会社や大家との話し合いで解決しない場合は、各地の消費生活センター(局番なし188)に相談するのも有効です。

敷金の返還

入居時に敷金を預けていた場合、原状回復費用は敷金から差し引かれます。通常損耗のみであれば、敷金の大部分が返還されるのが本来の姿です。差し引き後の残額は相続人の銀行口座に返金されます。敷金よりも原状回復費用のほうが高額になった場合は、差額を相続人が支払うことになります。

故人が孤独死だった場合

室内で亡くなってから発見までに時間がかかった場合、特殊清掃が必要になることがあります。特殊清掃費用は数万円〜数十万円に及ぶことがあり、原状回復費用とは別に請求されるのが一般的です。孤独死の場合の費用負担は個別のケースによって異なるため、管理会社とよく話し合うことが重要です。

連帯保証人がいる場合の取扱い

賃貸借契約に連帯保証人がいる場合、契約者が亡くなっても連帯保証人の責任は原則として消滅しません。

名義変更の場合

名義変更の際に、連帯保証人をそのまま引き継ぐか、新しい連帯保証人を立てるかは管理会社の判断になります。2020年4月施行の改正民法により、個人の連帯保証人には**極度額(保証の上限額)**の定めが必要になりました。名義変更に伴い新たな保証契約を結ぶ場合は、極度額が明記されているかを確認してください。

解約の場合

解約までの未払い家賃や原状回復費用について、連帯保証人に請求が及ぶことがあります。相続人が支払いを行えば連帯保証人への請求は発生しませんが、相続人が相続放棄をした場合など、連帯保証人が最終的な負担を求められるケースもあります。

家賃保証会社を利用している場合

近年は連帯保証人の代わりに家賃保証会社を利用する契約が増えています。保証会社を利用している場合、未払い家賃は保証会社が立て替えますが、後日保証会社から相続人に求償(立替金の返還請求)が行われるのが通常です。

一人暮らしの親が亡くなった場合の実務的な流れ

遠方に住む親が賃貸住宅で一人暮らしをしていた場合、手続きは以下の流れで進めるのが効率的です。

  1. 管理会社に連絡(死亡後できるだけ早く) — 契約者の死亡を伝え、解約の意思と今後のスケジュールを相談する
  2. 契約書の確認 — 解約予告期間、敷金の額、原状回復の特約の有無を確認する
  3. 鍵の受け取り — 故人が持っていた鍵をすべて確保する(遺品の中から探す)
  4. 遺品整理の手配 — 自分で行うか業者に依頼するかを判断する。業者に依頼する場合の費用は1K〜1DKで3〜8万円、2DK〜2LDKで10〜25万円が目安
  5. 公共料金の手続き — 電気・ガス・水道の解約を進める(公共料金の名義変更・解約を参照)
  6. 退去立ち会いと鍵の返却 — 管理会社の担当者とともに室内を確認し、鍵を返す
  7. 敷金の精算 — 原状回復費用を差し引いた敷金の返還を受ける

公営住宅(UR・都営・県営)の場合の特則

公営住宅は民間の賃貸住宅とはルールが異なります。公営住宅の入居権(使用権)は相続の対象にはならないのが原則です。

UR賃貸住宅

URでは契約者が死亡した場合、同居している配偶者または60歳以上の親族など、一定の条件を満たす同居者が「承継」の届出をすることで住み続けることができます。承継できる範囲はURの規定により限られており、別居していた親族は承継できません。

都営住宅・県営住宅・市営住宅

公営住宅法に基づく公営住宅では、契約者が死亡した場合に同居親族が「使用承継」を申請できます。ただし、承継できる範囲は自治体によって異なり、配偶者や高齢者・障害者など一定の要件を満たす方に限定されていることが多いです。収入要件の再審査が行われる場合もあります。

共通の注意点

よくある質問

Q. 契約者が亡くなった後、家賃を払わなければ自動的に契約は終了しますか?

いいえ、家賃を滞納しても契約は自動的には終了しません。滞納が続くと貸主から契約解除の通知が届き、最終的には法的手続き(建物明渡訴訟)に発展するおそれがあります。また、滞納分の家賃は相続人に支払い義務があります。解約する場合でも、正式な手続きを行い、明け渡しまでの家賃はきちんと支払うようにしてください。

Q. 相続放棄をした場合、賃貸住宅の明け渡し義務はどうなりますか?

相続放棄をすると、賃借権も含めてすべての相続財産を放棄することになります。ただし、民法940条により、相続放棄をした者は、放棄によって相続人となった者が管理を始めるまでの間、自己の財産と同一の注意をもって相続財産を管理する義務を負います。実務的には、管理会社に相続放棄した旨を伝え、室内の残置物の処理について協議する必要があります。相続放棄を検討している場合は、室内の遺品を勝手に処分すると単純承認とみなされる可能性があるため、弁護士に相談してから対応してください。詳しくは「相続放棄の期限と手続きガイド」をご覧ください。

Q. 名義変更を拒否されることはありますか?

管理会社や大家が名義変更を拒否するケースは稀ですが、新しい契約者の収入が家賃に対して不十分と判断された場合に審査が通らないことはあります。その場合は、連帯保証人を追加する、家賃保証会社を利用するなどの条件を提示して再度交渉してみてください。また、借地借家法では、貸主に「正当事由」がなければ賃貸借契約の更新を拒絶できないとされているため、相続人が家賃を支払い続ける意思がある限り、一方的に退去を求められることは基本的にありません。

Q. 故人の賃貸住宅に残っていた家財はどう処分すればよいですか?

室内の家財(家具・家電・衣類・生活用品など)は相続財産に含まれます。相続人全員で話し合い、必要なものは引き取り、不要なものは処分します。自治体の粗大ごみ回収を利用するか、遺品整理業者に依頼するのが一般的です。業者に依頼する場合の費用目安は「遺品整理の進め方」を参照してください。なお、相続放棄を検討中の方は、遺品の処分が単純承認とみなされるリスクがあるため、弁護士に相談してから判断してください。

まとめ

賃貸住宅の名義変更や解約は、慣れない手続きで不安になることも多いですが、管理会社に相談すれば丁寧に案内してもらえるケースがほとんどです。まずは管理会社への連絡を最初の一歩として、一つずつ進めていきましょう。

手続きの全体像は「家族が亡くなったらやること一覧」にまとめています。公共料金の手続きは「電気・ガス・水道の名義変更」、携帯電話については「死亡時の携帯電話解約方法」もあわせてご確認ください。

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