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相続した不動産を売却したときの税金 — 譲渡所得税の計算方法と特例

更新日: 2026/2/27読了: 20分

この記事のまとめ

  • 譲渡所得=売却価格−取得費−譲渡費用で計算する
  • 相続税の申告期限から3年以内の売却なら取得費加算の特例が使える
  • 相続空き家の3,000万円特別控除で税負担を大幅に軽減できる場合がある

相続した不動産を売却するときの基本

相続した不動産を売却すると、利益(譲渡所得)に対して所得税・住民税がかかります。これを「譲渡所得税」と呼びます。相続税とは別の税金です。

相続で取得した不動産の場合、次の2つの重要なルールがあります。

つまり、相続した時点の時価ではなく、もともと被相続人が購入した価格が取得費になります。

ポイント

相続や贈与で取得した不動産は、被相続人の取得費と取得時期をそのまま引き継ぎます(所得税法第60条)。相続時の時価で取得したことにはなりません。

譲渡所得の計算方法

譲渡所得は次の計算式で求めます。

譲渡所得 = 売却価格 − 取得費 − 譲渡費用 − 特別控除額

各項目の内容は次の通りです。

項目内容
売却価格不動産の売買契約書に記載された金額
取得費被相続人がその不動産を購入したときの価格(建物は減価償却後の金額)
譲渡費用売却時にかかった費用(仲介手数料、印紙代、測量費、取壊し費用など)
特別控除額各種特例の適用による控除額(空き家の3,000万円控除など)

取得費に含まれるもの

取得費には、購入代金のほかに以下の費用も含めることができます。

ただし、建物については年数の経過に応じて減価償却費を差し引く必要があります。

建物の減価償却の計算

相続した建物の取得費は、被相続人の購入価格から減価償却費を差し引いた金額です。

建物の取得費 = 購入価格 − 減価償却費

非事業用(居住用)建物の減価償却費の計算式は次の通りです。

減価償却費 = 購入価格 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

主な構造別の償却率(非事業用)は以下の通りです。

建物の構造耐用年数償却率
木造33年0.031
鉄骨造(骨格材の肉厚3mm超4mm以下)40年0.025
鉄筋コンクリート造(RC造)70年0.015

取得費が不明な場合(概算取得費)

被相続人が不動産を購入した時期が古く、購入時の売買契約書や領収書が見つからない場合は、取得費が不明になることがあります。

この場合、**売却価格の5%を取得費とする「概算取得費」**が認められています(租税特別措置法第31条の4)。

注意

概算取得費(売却価格の5%)は非常に小さい金額になるため、譲渡所得が大きくなり税額が高くなります。売買契約書が見つからなくても、通帳の出金記録、購入当時の登記費用の領収書、不動産会社への問い合わせなどで取得費を推定できる場合があります。あきらめずに証拠を探してください。

計算例(概算取得費の場合)

売却価格が3,000万円の場合:

実際の購入価格が判明している場合と比べて、税額が大幅に増えるケースが多いため、できる限り取得費を証明する資料を探すことが重要です。

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取得費加算の特例

相続税を納付した人が、相続で取得した不動産を一定期間内に売却した場合、相続税額の一部を取得費に加算できる特例があります。これにより譲渡所得が減り、税負担が軽くなります。

適用条件

加算できる金額の計算式

取得費に加算する相続税額 = その人の相続税額 ×(売却した財産の課税価格 ÷ その人の相続税の課税価格)

つまり、相続した財産全体のうち売却した不動産が占める割合に応じた相続税額を、取得費に上乗せできます。

計算例

加算できる金額: 500万円 ×(4,000万円 ÷ 1億円)= 200万円

ポイント

取得費加算の特例と、次に説明する「相続空き家の3,000万円特別控除」は併用できません。どちらが有利になるかを試算してから選びましょう。

相続空き家の3,000万円特別控除

被相続人が一人で住んでいた家(空き家)を相続して売却する場合、一定の条件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例です(租税特別措置法第35条)。

適用条件

すべての条件を満たす必要があります。

条件内容
建物の建築時期昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された建物であること
被相続人の居住相続開始の直前まで被相続人が居住していたこと(老人ホーム入所の場合は一定の要件あり)
同居人相続開始の直前に被相続人以外に居住者がいなかったこと
売却までの状態相続の時から売却の時まで、事業・貸付・居住の用に供されていないこと
売却の条件耐震基準に適合するようリフォームするか、建物を取り壊して更地にして売却すること
売却期限相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
売却価格売却価格が1億円以下であること

2024年1月1日以降の改正点

2024年1月1日以降の譲渡については、次の改正が適用されます。

注意

この特例を適用するには、被相続人居住用家屋等確認書(市区町村が発行)の取得が必要です。確認書の申請には時間がかかることがあるため、売却を検討し始めた段階で早めに市区町村に相談してください。

長期譲渡所得と短期譲渡所得の税率

不動産の譲渡所得にかかる税率は、売却した年の1月1日時点での所有期間によって異なります。

区分所有期間所得税住民税復興特別所得税合計税率
長期譲渡所得5年超15%5%0.315%20.315%
短期譲渡所得5年以下30%9%0.63%39.63%

相続した不動産の場合、被相続人の取得時期を引き継ぐため、被相続人が5年以上所有していれば長期譲渡所得の税率が適用されます。親が数十年前に購入した実家を相続して売却するようなケースでは、ほぼ確実に長期譲渡所得に該当します。

ポイント

所有期間の判定は「売却した年の1月1日時点」で行います。実際の所有期間が5年を超えていても、1月1日時点で5年以下であれば短期譲渡所得として扱われるため注意が必要です。

確定申告の手続き

不動産を売却して譲渡所得が発生した場合は、翌年の2月16日から3月15日の期間に確定申告が必要です。特別控除を適用して譲渡所得がゼロになる場合でも、申告が必要です。

必要書類

書類取得先
確定申告書(第一表・第二表)国税庁ウェブサイト・税務署
譲渡所得の内訳書(確定申告書付表)国税庁ウェブサイト・税務署
売買契約書(売却時)の写し手元の書類
売買契約書(購入時)の写し手元の書類(取得費の証明用)
仲介手数料等の領収書不動産会社等
登記事項証明書法務局
相続税の申告書の写し(取得費加算の特例を適用する場合)手元の書類
被相続人居住用家屋等確認書(空き家の3,000万円控除を適用する場合)市区町村
耐震基準適合証明書または取壊し費用の領収書(空き家の3,000万円控除の場合)検査機関・解体業者
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よくある質問

Q1. 相続した不動産を売却したら、相続税と譲渡所得税の二重課税になりませんか?

形式的には相続税と譲渡所得税の両方がかかりますが、「取得費加算の特例」がまさにこの二重課税を調整するための制度です。相続税の申告期限の翌日以後3年以内に売却すれば、納付した相続税の一部を取得費に上乗せでき、譲渡所得税の負担を軽減できます。

Q2. 相続した不動産を売却して損失が出た場合、税金はかかりますか?

譲渡所得がマイナス(譲渡損失)の場合、譲渡所得税はかかりません。ただし、不動産の譲渡損失は原則として他の所得(給与所得など)と損益通算できないため、損失が出ても税金の還付は受けられないのが一般的です。なお、一定の要件を満たすマイホームの譲渡損失は損益通算が認められる特例がありますが、相続した不動産はこの特例の対象外です。

Q3. 相続した土地を兄弟で共有のまま売却した場合、3,000万円控除は一人ずつ使えますか?

相続空き家の3,000万円特別控除は、適用条件を満たしていれば各相続人がそれぞれ適用できます。ただし、2024年1月1日以降の譲渡で相続人が3人以上の場合は、控除額が一人あたり2,000万円に引き下げられます。相続人が2人の場合は、それぞれ最大3,000万円(合計6,000万円)の控除が可能です。

Q4. 取得費加算の特例と空き家の3,000万円控除は併用できますか?

併用できません。どちらか一方を選択する必要があります。一般的には、相続税の負担が大きく取得費加算額が3,000万円を超えるような場合は取得費加算の特例が有利になり、それ以外のケースでは3,000万円控除が有利になることが多いです。具体的な金額を試算のうえ、税理士に相談することをお勧めします。


まとめ

相続した不動産を売却する際の税金は、取得費の引継ぎルールと各種特例の適用によって大きく変わります。特に「取得費加算の特例」と「相続空き家の3,000万円特別控除」は節税効果が高いため、適用条件を事前に確認しておくことが重要です。

取得費が不明な場合は概算取得費(売却価格の5%)となり税負担が大幅に増えるため、売買契約書や通帳記録などの証拠資料を可能な限り探してください。

不動産の相続登記については「不動産の相続登記ガイド」を、相続税全般は「相続税の申告ガイド」をご覧ください。


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