生前対策

おひとりさまの終活ガイド — 身寄りがない場合に準備すべきこと

更新日: 2026/2/27読了: 21分

この記事のまとめ

  • 遺言書がないと財産は国庫に帰属する可能性がある
  • 死後事務委任契約で葬儀・届出を任せられる
  • 自治体の終活支援事業が全国で広がっている

はじめに

「自分が倒れたとき、亡くなったとき、誰が手続きをしてくれるのだろう」——配偶者やお子さんのいない方にとって、これは漠然とした不安ではなく、現実的な問題です。

内閣府の「高齢社会白書」によると、65歳以上の一人暮らし世帯は増加の一途をたどっており、2020年時点で約670万世帯、2025年には約750万世帯に達すると推計されています。生涯未婚率も上昇を続けており、おひとりさまの終活は、もはや特別なことではなく、多くの方にとって身近なテーマになりました。

この記事では、身寄りのない方・独身の方が元気なうちに準備しておくべきことを、優先順位をつけて解説します。一つずつ進めていけば大丈夫です。焦らず、できるところから始めましょう。

おひとりさまの終活が必要な理由

相続人がいないと財産は国庫に帰属する

配偶者も子もなく、両親・兄弟姉妹もすでに亡くなっている場合、法定相続人が存在しないことになります。この場合、遺言書がなければ、家庭裁判所による相続財産清算人の選任手続きを経て、最終的に財産は国庫に帰属します(民法959条)。

お世話になった友人や団体に財産を渡したいと思っていても、遺言書がなければその意思は実現できません。

注意

遺言書がないまま亡くなると、法定相続人がいない場合は財産が国庫に帰属します。「友人に譲りたい」「お世話になった団体に寄付したい」といった希望があっても、遺言書なしでは法的に実現できません。元気なうちに遺言書を作成しておくことが大切です。

死後の手続きをする人がいない

人が亡くなると、死亡届の提出、葬儀の手配、各種契約の解約、遺品整理など、数多くの手続きが必要になります。家族がいれば自然と対応してもらえますが、身寄りのない方の場合、これらの手続きを行う人がいません。

放置された賃貸住居の家賃が発生し続ける、公共料金が未払いになる、といったトラブルにつながることもあります。

認知症になったとき自分を守れない

厚生労働省の推計では、2025年に65歳以上の約5人に1人が認知症になるとされています。判断能力が低下すると、預金の引き出しや施設への入所契約など、日常生活に必要な法律行為ができなくなります。

身寄りのない方の場合、市区町村長が法定後見の申立てを行うことになりますが、時間がかかり、自分の希望が反映されにくいのが現実です。

準備すべきこと一覧(優先順位つき)

おひとりさまの終活で準備すべき項目を、始めやすい順に整理しました。

1. エンディングノートを書く

まずは、自分の情報や希望を一冊にまとめることから始めましょう。エンディングノートに法的拘束力はありませんが、以下の情報を整理しておくことで、後の手続きがスムーズになります。

書き方の詳しい手順は「エンディングノートの書き方」で解説しています。

2. 遺言書を作成する

おひとりさまにとって、遺言書は最も重要な書類の一つです。遺言書があれば、財産を友人や知人、NPO法人、自治体などに遺贈(遺言による贈与)できます。

おひとりさまには公正証書遺言が特におすすめです。理由は以下のとおりです。

また、遺言書には遺言執行者を必ず指定しましょう。遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う人です。身寄りのない方の場合、弁護士や司法書士などの専門家を指定しておくと確実です。

遺言書の具体的な書き方は「遺言書の書き方ガイド」をご覧ください。

3. 任意後見契約を結ぶ

任意後見契約は、将来判断能力が低下した場合に備えて、自分で信頼できる後見人をあらかじめ選んでおく制度です(任意後見契約に関する法律)。

元気なうちに契約しておけば、認知症になっても自分が選んだ人に財産管理や介護施設の入所契約などを任せられます。公正証書で作成することが法律上必須です。

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4. 死後事務委任契約を結ぶ

遺言書では対応できない死後の事務手続き(葬儀手配、届出、遺品整理、各種契約の解約など)を、生前に第三者へ委任しておく契約です。

委任できる事務の例は以下のとおりです。

詳しくは「死後事務委任契約とは」で解説しています。

5. 財産・デジタル資産の整理

使っていない銀行口座の解約、不要なサブスクリプションの整理、重要書類の保管場所の明確化などを進めましょう。デジタル資産(ネット銀行・証券口座、SNSアカウント、クラウドデータなど)もリスト化しておくことが大切です。

6. 医療・介護の意思表示

延命治療の希望や、介護が必要になった場合の希望を書面にしておくことも重要です。

リビングウィルに法的拘束力はありませんが、医療・介護の現場では本人の意思を確認する重要な資料として尊重されます。

各制度の組み合わせ方

おひとりさまの終活に関わる制度は、効力が発生する時期と対象が異なります。以下の表で整理します。

時期制度対象範囲
元気なうちからエンディングノート情報の整理・希望の記録
判断能力低下後任意後見契約財産管理・身上監護
死亡後(財産)遺言書財産の分配・承継
死亡後(事務)死後事務委任契約葬儀・届出・解約・遺品整理

一つの制度だけでは、生前から死後までのすべてをカバーすることはできません。任意後見契約+遺言書+死後事務委任契約の3つを組み合わせることで、判断能力低下時から死後まで切れ目のない備えが可能になります。

ポイント

どこから手をつけてよいかわからない場合は、まずお住まいの地域の地域包括支援センターに相談してみてください。無料で相談でき、必要に応じて専門家や支援制度を紹介してもらえます。地域包括支援センターは全国すべての市区町村に設置されており、電話でも相談可能です。

自治体の終活支援制度

近年、身寄りのない高齢者の増加を背景に、自治体が独自の終活支援事業を展開する動きが広がっています。

横須賀市「わたしの終活登録」

2018年に全国に先駆けて開始。緊急連絡先やエンディングノートの保管場所、遺言書の有無などを市に登録しておく制度です。万が一のとき、病院や警察、福祉事務所からの照会に応じて、登録情報を開示します。登録は無料です。

豊島区「終活あんしんセンター」

社会福祉協議会が運営し、終活に関する総合的な相談窓口を提供。エンディングノートの作成支援から、死後事務委任契約の相談まで対応しています。

大和市「わたしの終活コンシェルジュ」

終活に関する相談を市の窓口で受け付けるほか、終活情報の登録事業も実施。地域包括支援センターと連携して支援を行っています。

このほかにも、多くの自治体が終活に関する講座やセミナーを開催しています。お住まいの市区町村の窓口に問い合わせてみましょう。

費用の目安

おひとりさまの終活に必要な費用の目安をまとめます。

項目費用の目安備考
エンディングノート0〜2,000円市販ノートの購入費。自治体で無料配布の場合も
公正証書遺言の作成3〜10万円財産額に応じた公証人手数料+証人手配費
任意後見契約の作成3〜5万円公正証書作成費用。専門家への依頼料は別途
死後事務委任契約30〜50万円受任者への報酬
預託金50〜100万円葬儀・遺品整理などの実費をあらかじめ預ける
合計の目安約100〜170万円預託金を含む。内容により変動

預託金は高額ですが、実際に使われなかった分は遺言書で指定した受遺者に返還されます。預け先の信頼性(分別管理の有無など)は事前に十分確認してください。

なお、任意後見が発効した後は、後見人への報酬(月額2〜6万円程度)が継続的に発生します。

相談窓口

おひとりさまの終活について相談できる主な窓口を紹介します。

相談先対応内容費用
地域包括支援センター終活全般の相談、専門家・制度の紹介無料
社会福祉協議会死後事務委任・日常生活自立支援事業無料(一部有料サービスあり)
法テラス(日本司法支援センター)法的手続きの情報提供・弁護士費用の立替無料相談あり(収入要件あり)
弁護士・司法書士・行政書士遺言書作成・任意後見契約・死後事務委任契約有料(初回無料相談の事務所も)

よくある質問

Q. おひとりさまの終活は何歳から始めるべきですか?

年齢に決まりはありませんが、判断能力が十分にあるうちに始めることが重要です。任意後見契約は判断能力が低下した後では結べません。50代・60代のうちから少しずつ準備を始めるのが理想的です。エンディングノートは年齢に関係なく、思い立ったときに書き始められます。

Q. 身寄りがまったくなくても遺言書を作れますか?

作成できます。公正証書遺言であれば、公証役場で証人2名の立ち会いのもと作成します。証人は公証役場で手配してもらえるため、知人に頼む必要はありません。遺言執行者には弁護士や司法書士を指定しておくのが安心です。

Q. 死後事務委任契約と遺言書の両方が必要ですか?

それぞれ対象範囲が異なるため、両方の準備をおすすめします。遺言書は財産の分配を定めるもの、死後事務委任契約は葬儀や届出、各種解約などの事務手続きを委任するものです。遺言書だけでは葬儀の手配や部屋の片付けはカバーできません。

Q. 費用を抑える方法はありますか?

自治体の終活支援事業を利用するのが有効です。無料相談やエンディングノートの無料配布を行っている自治体が増えています。また、社会福祉協議会が比較的低コストで死後事務委任を引き受けている地域もあります。法テラスでは収入要件を満たせば弁護士費用の立替制度を利用できます。

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まとめ

おひとりさまの終活は、「自分の最期を自分で決める」ための前向きな行動です。遺言書・任意後見契約・死後事務委任契約の3つを組み合わせれば、判断能力が低下したときから亡くなった後まで、切れ目のない備えができます。

すべてを一度に準備する必要はありません。まずはエンディングノートを書くことから始めて、少しずつ進めていきましょう。わからないことがあれば、地域包括支援センターや社会福祉協議会に気軽に相談してみてください。

エンディングノートの書き方」で情報整理を始め、「遺言書の書き方ガイド」で遺言書を作成し、「死後事務委任契約とは」で死後の備えを、「成年後見制度の基礎知識」で認知症への備えを進めましょう。一人で抱え込まず、専門家の力を借りながら、安心できる将来を準備していきましょう。

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