寡婦年金・死亡一時金とは?受給条件・金額・手続きを解説
目次
この記事のまとめ
- —遺族基礎年金がもらえない妻向けの制度が寡婦年金
- —死亡一時金は12〜32万円の一括支給
- —寡婦年金と死亡一時金は併給できない
はじめに
国民年金の加入者が亡くなったとき、まず検討されるのが「遺族基礎年金」です。しかし、遺族基礎年金は「18歳到達年度末までの子がいる配偶者または子」にしか支給されません。子がいない配偶者や、子がすでに成人している場合は対象外です。
このように遺族基礎年金を受給できないケースのために設けられているのが、寡婦年金と死亡一時金の2つの制度です。いずれも国民年金の第1号被保険者(自営業者・フリーランスなど)独自の給付であり、故人が会社員・公務員(第2号被保険者)だった場合は対象になりません。
この記事では、寡婦年金と死亡一時金それぞれの受給条件・金額・手続き方法を解説し、どちらを選ぶべきかの判断基準をまとめます。
制度の位置づけ
寡婦年金と死亡一時金は、国民年金法に定められた「第1号被保険者独自の給付」です。第1号被保険者は遺族厚生年金の対象にならないため、遺族基礎年金も受給できない場合、遺族への保障が手薄になります。これを補完する「セーフティネット」として位置づけられています。
| 制度 | 性格 | 対象 |
|---|---|---|
| 遺族基礎年金 | 主たる遺族保障 | 子のある配偶者または子 |
| 寡婦年金 | 補完的な年金給付 | 子がいない妻(60〜65歳) |
| 死亡一時金 | 補完的な一時金給付 | 生計同一の遺族 |
寡婦年金
受給要件
寡婦年金を受給するには、故人(夫)の要件と遺族(妻)の要件の両方を満たす必要があります。
故人(夫)の要件:
- 国民年金の第1号被保険者として、保険料納付済期間と保険料免除期間を合算して10年以上あること
- 老齢基礎年金を受給したことがないこと
- 障害基礎年金の受給権を有したことがないこと
遺族(妻)の要件:
- 夫との婚姻期間(事実婚を含む)が10年以上継続していたこと
- 夫に生計を維持されていたこと
- 65歳未満であること
- 老齢基礎年金の繰上げ受給をしていないこと
金額
寡婦年金の額は、亡くなった夫の第1号被保険者期間だけで計算した老齢基礎年金額の 3/4(75%) です。
2025年度の老齢基礎年金の満額は年額816,000円ですので、夫が40年間すべて第1号被保険者として保険料を納付していた場合の寡婦年金は、年額 約612,000円(月額 約51,000円)が上限となります。
実際の金額は夫の納付期間に応じて変わります。正確な金額は年金事務所で試算してもらうのが確実です。
支給期間
妻が 60歳から65歳になるまでの5年間 です。夫が亡くなった時点で妻が60歳未満であれば、60歳に達してから支給が始まります。60歳以上65歳未満で夫が亡くなった場合は、請求の翌月から65歳になるまで支給されます。
妻が65歳になると自分の老齢基礎年金に切り替わるため、寡婦年金は打ち切りになります。
手続き方法
届出先: 市区町村役場の年金窓口、または年金事務所
必要書類:
| 書類 | 備考 |
|---|---|
| 年金請求書(国民年金寡婦年金) | 年金事務所・市区町村窓口で入手、または日本年金機構のウェブサイトからダウンロード |
| 故人の年金手帳または基礎年金番号通知書 | 紛失の場合は基礎年金番号が分かればOK |
| 戸籍謄本 | 故人との婚姻期間が確認できるもの |
| 世帯全員の住民票 | マイナンバー記載で省略できる場合あり |
| 故人の住民票除票 | 死亡日が確認できるもの |
| 請求者の収入を確認できる書類 | 所得証明書、源泉徴収票など |
| 請求者名義の金融機関の通帳 | コピー可 |
| 死亡診断書のコピー | 死亡を証明する書類として |
請求期限は夫の死亡日の翌日から 5年以内 です。
死亡一時金
受給要件
- 故人が国民年金の第1号被保険者として保険料を 36月(3年)以上 納付していたこと
- 故人が老齢基礎年金・障害基礎年金のいずれも受給していなかったこと
- 遺族基礎年金を受給できる遺族がいないこと
受給できる遺族(優先順位)
故人と生計を同じくしていた遺族で、以下の優先順位で支給されます。
- 配偶者
- 子
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
寡婦年金とは異なり、配偶者の性別は問いません。夫を亡くした妻だけでなく、妻を亡くした夫も受給できます。
金額
保険料を納付した月数に応じて、以下の金額が一括で支給されます。
| 保険料納付済期間 | 金額 |
|---|---|
| 36月以上180月未満 | 120,000円 |
| 180月以上240月未満 | 145,000円 |
| 240月以上300月未満 | 170,000円 |
| 300月以上360月未満 | 220,000円 |
| 360月以上420月未満 | 270,000円 |
| 420月以上 | 320,000円 |
さらに、故人が付加保険料を36月(3年)以上納付していた場合は、上記の金額に 8,500円 が加算されます。
請求期限
死亡日の翌日から 2年以内 です。寡婦年金の5年より短いため注意が必要です。
寡婦年金と死亡一時金はどちらか一方しか受給できません。両方の受給要件を満たしている場合は、いずれかを選択する必要があります。一度選択して受給すると、もう一方を後から請求することはできません。
手続き方法・必要書類
届出先: 市区町村役場の年金窓口、または年金事務所
必要書類:
| 書類 | 備考 |
|---|---|
| 国民年金死亡一時金請求書 | 年金事務所・市区町村窓口で入手 |
| 故人の年金手帳または基礎年金番号通知書 | 紛失の場合は基礎年金番号が分かればOK |
| 戸籍謄本 | 故人と請求者の関係が分かるもの |
| 故人の住民票除票 | 死亡日が確認できるもの |
| 請求者の世帯全員の住民票 | マイナンバー記載で省略できる場合あり |
| 請求者名義の金融機関の通帳 | コピー可 |
寡婦年金と死亡一時金の比較
| 項目 | 寡婦年金 | 死亡一時金 |
|---|---|---|
| 受給者 | 婚姻10年以上の妻のみ | 生計同一の遺族(性別不問) |
| 故人の納付要件 | 10年以上 | 36月(3年)以上 |
| 支給形態 | 年金(60〜65歳の5年間) | 一時金(一括支給) |
| 金額 | 老齢基礎年金の3/4(最大 約61万円/年) | 12万〜32万円 |
| 総額(最大) | 約305万円(5年分) | 32万円(+8,500円) |
| 請求期限 | 5年以内 | 2年以内 |
| 併給 | どちらか一方のみ選択 | どちらか一方のみ選択 |
どちらを選ぶべきか
両方の受給要件を満たしている場合、一般的には寡婦年金の方が総額で有利です。寡婦年金は5年間にわたって支給されるため、夫の納付期間が長ければ総額300万円近くになることもあります。一方、死亡一時金は最大でも32万円程度です。
ただし、以下のケースでは死亡一時金を選ぶ方が合理的な場合があります。
- すぐにまとまった現金が必要な場合 — 葬儀費用などで手元資金が足りないとき
- 妻の年齢が60歳に近い、または60歳を超えている場合 — 寡婦年金の受給期間が短くなり、総額が死亡一時金より少なくなることがある
- 妻が老齢基礎年金の繰上げ受給を検討している場合 — 繰上げ受給をすると寡婦年金は受給できなくなる
判断に迷う場合は、年金事務所の窓口で寡婦年金の見込み額を試算してもらい、死亡一時金の額と比較した上で決めるのが確実です。
年金事務所では、寡婦年金の見込み額を無料で試算してもらえます。「寡婦年金と死亡一時金のどちらが有利か相談したい」と伝えれば、具体的な金額をもとにアドバイスを受けられます。予約制の事務所が多いため、事前に電話(ねんきんダイヤル: 0570-05-1165)で予約しておくとスムーズです。
遺族基礎年金・遺族厚生年金との関係
寡婦年金・死亡一時金と、遺族基礎年金・遺族厚生年金の関係を整理します。
遺族基礎年金との関係:
- 遺族基礎年金を受給できる遺族がいる場合、死亡一時金は支給されません
- 寡婦年金と遺族基礎年金は併給できません(いずれかを選択)
遺族厚生年金との関係:
- 故人が会社員・公務員(第2号被保険者)だった場合、そもそも寡婦年金・死亡一時金の対象外です
- 故人が第1号被保険者と第2号被保険者の両方の期間がある場合、遺族厚生年金と寡婦年金は併給できません(65歳未満の場合はいずれかを選択)
実際の年金加入歴は複雑なケースが多いため、自己判断せずに年金事務所で確認してもらうことをおすすめします。
よくある質問
Q. 事実婚(内縁関係)でも寡婦年金は受給できますか?
受給できます。寡婦年金の「婚姻期間10年以上」には、事実婚の期間も含まれます。ただし、事実婚の関係を証明する書類(住民票の続柄欄に「妻(未届)」と記載されているもの、連名の郵便物など)が必要になります。
Q. 夫が自営業と会社員の両方の期間がある場合はどうなりますか?
寡婦年金の納付要件(10年以上)は、第1号被保険者としての期間のみで判定します。会社員(第2号被保険者)の期間は含まれません。一方、会社員期間があれば遺族厚生年金の対象になる可能性があるため、年金事務所で総合的に確認してもらいましょう。
Q. 死亡一時金に税金はかかりますか?
死亡一時金は所得税・住民税の課税対象外です。また、相続税についても原則として非課税として扱われます。確定申告も不要です。
Q. 寡婦年金を受給中に再婚した場合はどうなりますか?
再婚すると寡婦年金の受給権は消滅します。事実婚(内縁関係)の場合も同様です。受給権が消滅した後は、死亡一時金に切り替えることはできません。
まとめ
寡婦年金と死亡一時金は、遺族基礎年金を受け取れない場合の重要なセーフティネットです。とくに自営業者の遺族は、この制度の存在を知らずに請求しないまま期限を過ぎてしまうケースが少なくありません。「自分は対象かもしれない」と思ったら、まず年金事務所に相談してください。
- 故人が第1号被保険者(自営業・フリーランス等)だったか確認する
- 遺族基礎年金の受給対象になるか確認する(対象外なら寡婦年金・死亡一時金を検討)
- 寡婦年金と死亡一時金のどちらが有利か年金事務所で試算してもらう
- 必要書類をそろえる(戸籍謄本・住民票除票・年金手帳・通帳コピー)
- 市区町村役場または年金事務所に請求書を提出する
- 請求期限を確認する(寡婦年金5年以内・死亡一時金2年以内)
遺族年金の手続き全般については「遺族年金の手続き — 受給条件・金額の目安・申請方法」で解説しています。年金受給停止届については「年金受給停止の手続き — 届出先・期限・必要書類をやさしく解説」を、未支給年金の請求については「未支給年金の手続き — 請求方法・対象者・必要書類をやさしく解説」をご覧ください。
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